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長谷川高「“ガラガラポン”の時代を生き抜くための経済・投資入門」

ビジネスや投資の成功者が重視する「見」「待つ」の重要性…“場と運気”を全力でうかがう

文=長谷川高/長谷川不動産経済社代表
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「Getty Images」より

 私が子供の頃「人生ゲーム」なる双六が流行った時がありました。人生ゲームとは言いながらも、しょせん双六ですので、サイコロを振り、出た目だけ紙製のボード上で自分の駒を進めるというものです。そして、早く「ゴール」に到着した者が勝ちとなる単純なものでした。

 サイコロの出た目の数通り進むと、そこには「交通事故にあい、2コマ下がる」とか「●●で3コマ進む」と記載があり、単純なゲームではありましたが、なかなか簡単にはゴールできないようにできていました。子供にとって雨の日の暇つぶしにはもってこいの遊びでした。

 こういった双六ゲームでよくあるのが「一回休み」というものです。つまりサイコロを振る順番が一度スルーされるというものです。その分だけ先へ進むのが遅れるわけです。さて、今回の新型コロナウイルス感染拡大によるさまざまな不自由は、早1年を経過しようとしています。経済的な面においては飲食店や宿泊・観光業で働く方々ばかりでなく、多くの業種において甚大な被害が続いています。結果、世界中で新型コロナという感染症によって、長期の「一回休み」を取らざるを得なくなりました。

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『不動産2.0』(長谷川高/イースト・プレス)

 我々は、特にビジネスにおいて「休む」などということは元来想定しておらず、そもそも「休む」などということは怠惰なことか罪悪であるように教育を受けてきました。ただ、今やこのような状況になってみると、「休む」こと自体を学ぶことが必要だと感じます。「いかに休むか」をです。そんなことを申しますと「休んでいる余裕などない!」といったお怒りの声が聞こえてきそうですが。お許しください。

 しかし、この数十年を振り返っただけでも、阪神淡路大震災、リーマンショック、東日本大震災、そして今回の新型コロナと、人間にはどうにもならない事態が次から次へと起こってきました。さらには現在、地球温暖化による異常気象の慢性化が世界各地にさまざまな天災を引き起こしています。

 人生ゲームは子供向けの双六ですが、思えばよくできたゲームだったと思います。リアルな人生においても、他者より数歩先に進むこともありますが、逆に3歩も6歩も遅れることが起こり得ます。まさにあのゲームと同じです。また、人生ゲームでは「降り出し(スタート地点)に戻る」などという目が出る時があります。しかし、このゲームが面白かったのは、一度降り出しに戻った者がその後、運に恵まれ最終的には勝ってしまうなんてことが起こったことです。この点は、リアルな人生においても同じなのではないでしょうか?

「休み」にも「術」が必要

 さて、今回は世界中の人々にとって「一回休み」という「目」が出ました。それも長期の「一回休み」となりました。そこで、前述のとおり、この「休み」を「いかに休むか」なのです。堂々と休む、虎視眈々と休む、捲土重来を期しながら休む――。一つ言えることは、「休み」にも「術」が必要だということです。

 ギャンブル用語で「見(けん)」というものがあります。賭場やカジノに入っていって、いきなり大金を掛けるのではなく、「場」と自分の「運気」の様子をうかがうのです。つまり少額のチップを掛けて、その様子を見るのです。自分に運気が向いていないと思えば、その日は賭けを見合わすのです。また当日の夜半か翌日に自分の運気が上昇してきたと感じたら勝負を始める。

 しかし、この「見る」というのもただ漫然と様子をうかがうということではありません。全神経を集中し、全身全霊をもってその場と自分の運気をうかがうのです。

 これは昔からギャンブルの世界でのプロにとっては、古典的ではありますが、唯一無二の戦略のようです。

 投資の世界でも、神様と言われるウォーレン・バフェットは、投資の必勝法(というよりは負けない方法)として、それを野球にたとえ「自分にとっての絶好球が来るまでバットを振らないことだ」と言っています。しかし、多くの投資家はこれが待てない、つまり自分にとっての絶好球が来るまでに、待てずに悪球に手を出しバットを振ってしまいます。自分にとって勝てるチャンスが来るまでバッターボックスに立ち続けるのは、やはり難しいことなのです。

ビットコインが大暴騰した」「日経平均が3万円を30年ぶりに超えた」といったニュースを聞いて、すぐに飛びつくのではダメなのです。つまり、まずは「見」の構えでいくのです。

 しかし、これがビジネスの場合は、こう単純にはいかないのも事実です。投資や博打はステークホルダーが自分だけですから「見」も自由勝手に行えますが、ビジネスにおいてはステークホルダーが多岐にわたります。今回のような状況になった時に「見」に徹すると言っても、とにもかくにも日々の糧を稼がなくてはいけません。特に経営者は毎月の賃料や従業員の給料を払い続けなければなりません。何カ月も「見」に徹するのは非現実的だと言われるのももっともです。言うはやすく行うはかたしです。

「商売は扇子のごとく」

 ところで、大阪船場商人の家訓には「商売は扇子のごとく」というものがあります。商売は扇子のように、何か危機が起こった時には、扇子をスパッと閉じるがごとく縮小できるようにしておかないといけない。現実的にこの四半世紀を振り返っただけでも、いくつも震災や経済危機が起こっています。このような時に、まさに扇子を閉じるがごとく事業を縮小するということなのでしょう。

 しかし、これはご存知の通り実践するとなると難しいわけですから、これが不可能であるのならば、ブラックスワン的な危機に対応できるだけの利益剰余金(個人であれば預貯金)を確保しておくか、事業にポートフォリオ(個人であれば副業?)を組んでおくことが重要なのでしょう。

 これまでも、一部の野党が、企業のもつ利益剰余金に対して課税すべきと主張してきました。これにより、彼らは一度も商売などしたことがないビジネスど素人だったことを証明したわけです。

 ところで、前述の人生ゲームの「ゴール」には、ほかに何と書いてあったのでしょうか?まさか「定年」とか「リタイア」などと書いてあったとも思えません。ただ「ゴール」と書いてあっただけでしょうか? そこが気になるのですが、どうしても思い出せません。

 そもそもリアルな人生における「ゴール」とはなんなのか? それを考えれば、今回、一回休むことを恐れる必要などないのかもしれません。確かなことは、リアルな世界での勝ち負けは「到着の順位」ではないのですし。

 東京でもやっと梅が満開です。今年も確実に春がやって来ようとしています。

(文=長谷川高/長谷川不動産経済社代表)

長谷川高/長谷川不動産経済社代表

長谷川高/長谷川不動産経済社代表

東京生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。
大手デベロッパーにて、ビル・マンション企画開発事業、都市開発事業に携わり、バブルの絶頂期からその崩壊と処理までを現場の第一線で体験。 1996年に独立。
以来、創業から一貫して顧客(法人・個人)の立場で不動産と不動産投資に関するコンサルティング、投資顧問業務を行う。また、取引先企業と連携して大型の共同プロジェクトを数多く手掛ける。
自身も現役の不動産プレイヤーかつ投資家として、評論家ではなく現場と実践にこだわり続ける一方で、メディアへの出演や執筆、講演活動を通じて、難解な不動産の市況や不動産の購入・投資術をわかりやすく解説している。
長谷川不動産経済社

Twitter:@hasekei8888

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