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キリンHD、クーデターのミャンマー国軍系企業と合弁、解消に壁…海外戦略が行き詰まり

文=編集部

 2月19日付日本経済新聞で磯崎氏は次のように述べている。

<MEHLが株式売却に応じるかは不透明だ。磯崎社長は「MEHLが理解を示しても、軍が売却を拒否する恐れもある」と警戒する。現時点で「事業撤退の選択肢はない」と強調したものの、MEHLが売却に応じない場合は「ミャンマーから最終的に出て行くしかない」と撤退の可能性を示唆した>

「1年もかけたくない」と年内決着を強調したが、初めて「撤退」を公式に口にした。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは20年9月10日、ミャンマーの国軍系企業の株主に国軍部隊が含まれ、配当が軍の資金源になっていることを示す報告書を発表した。 国軍系企業のMEHLは、金融、農業、鉱山採掘など幅広い事業を手掛ける複合企業。国軍最高司令官らの監督下にあり、取締役は全員が軍人か退役軍人が務める。現役兵や退役軍人への福利厚生を目的とした年金基金を運用するファンドだ。

 アムネスティの報告書によると、MEHLの株式の一部は国軍の地方司令部や部隊が保有する。17年にロヒンギャの村での掃討作戦を指揮した司令部も含まれる。各部隊に支払われた配当金の具体的な使い道は不明だ。アムネスティはミャンマー政府に対し、「MEHLを国営企業に改組し、国軍から切り離す」などの改革を提言した。収益で基金を設置し「人権侵害の被害者の救済にあてるべきだ」と求めた。

 今回、ミャンマー国軍がクーデターを起こした背景には“利権”を守る狙いがあると指摘されている。国連人権理事会の調査団は19年8月、国軍の経済活動に関する報告書をまとめ、外資企業に国軍系企業との関係の解消を求めていた。

 キリンHDが合弁解消を決断した背景にあるのが、米国による制裁だ。バイデン米政権は2月11日、クーデターを指揮したミン・アウン・フライン国軍最高司令官ら国軍幹部10人と、国軍と関係が深い3社を制裁対象に指定した。ロイター通信によると、この3社は宝石を扱う会社でMEHLの傘下にある。

「キリンHDはMEHLに合弁解消を申し入れているが、国軍がそれを許すとは思えない」(ミャンマー事情に詳しい経済人)

「MEHLがダミー会社をつくって、キリンHDはその会社をパートナーにするといった抜け道を探すのではないか」(同)といった、うがった見方も浮上している。それもダメなら、キリンHDはミャンマーから撤退するしかなくなる。キリンHDは買収に失敗したブラジル事業を売却、アジア・オセアニアに海外事業を集中するためにミャンマーのビール事業に参入した経緯がある。いずれにしても苦渋の選択となることは間違いない。