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片田珠美「精神科女医のたわごと」

碇容疑者、なぜママ友に“支配”され、わが子を餓死させた?夫の嘘の浮気を信じ込まされ離婚

文=片田珠美/精神科医
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2)不安や恐怖をかき立てるのが得意

 赤堀容疑者は、家の中に監視カメラを設置し、共通の知人が見張っているなどと碇容疑者に信じこませ、「監視してるから(子どもに)食べさせ過ぎてはいけない」などと言っていたようだが、不安や恐怖をかき立てて支配しようとするのは、「マニピュレーター」の常套手段である。2012年10月に兵庫県尼崎市で発覚した連続殺人死体遺棄事件の主犯格とされる角田美代子(後に自殺)も、恐怖で被害者を支配していたようだ。

3)罪悪感を覚えることを徹底的に拒否

「平気でうそをつく人」と共通するのだが、相手をだましても、傷つけても、自分が悪いとは決して思わない。つまり、罪悪感を覚えないわけで、「自分の罪悪感と自分の意志とが衝突したときには、敗退するのは罪悪感であり、勝ちを占めるのが自分の意志である」(『平気でうそをつく人たち』)。

支配される側の要因

1)自分が攻撃されていることに気づけない

 何をされても、「自分のためを思ってやってくれている」と思いこみ、相手に悪意があるのではないかと疑おうとしない。そのため、操作されて自分が壊れつつあることに気づけない。

2)自ら考えて決めるのが苦手、あるいは責任を伴う判断を下したくない

 自分で考えて決めるのも判断するのも、必ず何らかの責任を伴う。それを避けようとするあまり、支配する側がすべてを決めて支配し、自分はそれに従うだけでいい関係を心地いいと感じる。

3)「問題があるのは自分のほう」と思いこみやすい

「マニピュレーター」に問題を指摘されると、自分に問題があるのではないかと思いこんでしまう。つまり、罪悪感を覚えやすいわけで、罪悪感を抱くことを徹底的に拒否し、他の誰かに押しつけたい「マニピュレーター」からすれば、いいカモである。

「マニピュレーター」は、どこにでもいる。しかも、相手を一段劣った立場にとどめておいて支配することに大きな快感を覚えるので、1度成功すればエスカレートする。

 職場の上司や同僚、友人や恋人、あるいは家族の中にも「マニピュレーター」が潜んでいる可能性は十分考えられる。おまけに、詐欺と同様に、自分は大丈夫と思っている人ほど被害者になりやすい。皆さんも十分気をつけてください。

(文=片田珠美/精神科医)

参考文献

片田珠美『他人を攻撃せずにはいられない人』PHP新書、2013年

M・スコット・ペック『平気でうそをつく人たち』森英明訳、草思社、1996年

ジョージ・サイモン『他人を支配したがる人たち』秋山勝訳、 草思社文庫、2014年

 ●片田珠美/精神科医

広島県生まれ。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。京都大学非常勤講師(2003年度~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。

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