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世界のスマホ・EV生産を支える…TDK、カセットテープ企業から最先端電池企業への変貌

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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電池事業には中期的なリスクも

 ただし、少し長めの目線で考えると、TDKの電池事業を取り巻く環境は変化する可能性がある。そう考える要因は2つある。

 まず、世界全体で電池関連の事業を手掛ける企業への成長期待はかなり強い。関連する企業の株価は、ある意味、期待先行で上昇している部分がある。昨年11月、EV用の全個体電池を開発する米スタートアップ企業、クオンタムスケープがSPAC(特別買収目的会社)との合併によって株式の上場を果した。クオンタムスケープは利益を出していない。それにもかかわらず株価が上昇したということは、成長期待が強いということだ。

 目先、世界的な低金利環境(カネ余り)は続き、ワクチン接種が世界経済の正常化期待を支える。その状況下、短期的に電池関連産業を取り巻く強気心理は維持され、株価には上昇圧力がかかりやすい。それは、企業経営者にとって設備投資の積み増しや買収などの正当化をサポートする要因になり得る。

 しかし、長期間にわたってそうした状況が続く展開は考えづらい。高値圏での買収などは、減損の発生リスクを高める。状況が良い場合にこそ、リスクへの備えを強化することが重要だ。それが環境変化への対応力を支える。

 それに加えて、価格競争のリスクもある。世界のバッテリー市場では、政府の補助金などに支えられて寧徳時代新能源科技(CATL)や比亜迪股份有限公司(BYD)など中国企業のシェア獲得が鮮明だ。それに加えて、韓国ではLG化学などが自動車の電動化への対応を目指して生産能力を増強しており、世界全体で供給圧力は増大傾向にある。

 見方を変えれば、電池事業の強化はTDKにとって、自ら競争が激化する市場に注力することになりかねない。世界全体で供給能力が高まった後に価格に下押し圧力がかかれば、TDKが収益率の向上を目指すことは難しくなる恐れがある。近年、ROEに加えてTDKの株主資本比率も低下している。同社は当面の収益を電池事業などで確保しつつ、どのように事業運営の効率性と持続性を高めるか、戦略策定の重要な局面を迎えている。

TDKに期待される原点への回帰

 今後の展開としてTDKに期待したいのが、原点回帰だ。同社は、東京工業大学で発明された磁性材料(フェライト)の事業化を目指して設立された。つまり、TDKは高機能素材の創出をオリジンとする企業だ。

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