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世界のスマホ・EV生産を支える…TDK、カセットテープ企業から最先端電池企業への変貌

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 それを強みにして同社は、カセットテープを開発するなど新しいモノを生み出して成長を実現した。新しいモノを生み出し、そのヒットを実現することができれば企業は成長し、利益率も高まる。反対に、コモディティー化に向かう市場での競争が続くと、成長の持続力は低下する。

 TDKの取り組みを見ていると、同社の経営陣は新しいモノを生み出すことの重要性をしっかりと理解している。同社の売上高に対する研究開発費の比率が上昇していることは、その裏返しといえる。一つの見方として、TDKは外部からの電池事業の取り込みによって得られた付加価値の一部をより高機能、かつ微細な素材に関する研究開発に再配分することによって、収益源の分散と強化を目指しているとみられる。

 その一つとして、コンデンサをはじめとする受動部品(受動部品とは、電力を消費、放出、貯蔵する機能を持つ電子部品<素子>のこと)事業の運営に注目したい。世界的に見て、コンデンサ分野におけるわが国企業の競争力は高い。TDKもコンデンサ分野での技術力を持つ。TDKにとって、次世代の通信規格(6Gなど)に対応した新しいコンデンサを開発することはさらなる成長を目指すために重要な戦略と考えられる。

 IT機器の小型化などを支えるために、素材のレベルから微細なモノを生み出すことの重要性は増す。その実現は、模倣困難な高い製造技術を確立し、参入障壁を手に入れることにつながる。中長期的な世界経済の展開を考えると、米国は半導体など基幹産業分野での脱中国の取り組みを進めるだろう。経済のデジタル化や米中の対立といった環境の変化に対応しつつ、TDKがより高い成長を実現するために、微細なモノ(素材、素子)を生み出す技術の重要性は高まる。そのために、同社経営陣が電池事業の成長によって獲得された経営資源をコンデンサ事業の強化などに再配分し、成果を実現することを期待したい。

(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

●真壁昭夫/法政大学大学院教授

一橋大学商学部卒業、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学大学院(修士)。ロンドン証券現地法人勤務、市場営業部、みずほ総合研究所等を経て、信州大学経法学部を歴任、現職に至る。商工会議所政策委員会学識委員、FP協会評議員。

著書・論文

『仮想通貨で銀行が消える日』(祥伝社、2017年4月)

『逆オイルショック』(祥伝社、2016年4月)

『VW不正と中国・ドイツ 経済同盟』、『金融マーケットの法則』(朝日新書、2015年8月)

『AIIBの正体』(祥伝社、2015年7月)

『行動経済学入門』(ダイヤモンド社、2010年4月)他。

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