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カインズがネットで大炎上?…“中の人”に聞くコロナ禍の施策とニトリ・島忠・DCM騒動

文・構成=編集部
カインズがネットで大炎上?…“中の人”に聞くコロナ禍の施策とニトリ・島忠・DCM騒動の画像1
カインズホームといえば、いわずと知れたホームセンターの雄。今、同社のオウンドメディア「となりのカインズさん」中のコンテンツ「深掘り! カインズ研究所」の内容がいろいろ“ヤバい”と話題だ。(画像はカインズオウンドメディア「となりのカインズさん」より)

 今年1月末、あのホームセンターの雄、カインズホームが“炎上”した。いや、いい意味で。

 カインズといえば、スーパーマーケットのベイシア、“ワークマン女子”で話題の作業服チェーン・ワークマンなどとともに、いわゆる「ベイシアグループ」の中核を成すホームセンター大手。埼玉県本庄市に本社を置き、店舗数は225、従業員数1万2000人超、売上高4410億円(いずれも2020年2月現在)を誇る一大企業である。

 東京などの大都市中心部にお住まいの方には馴染みが薄いかもしれないが、園芸やDIYのみならず、昨今はなんでも揃う“郊外のショッピングセンター”的なポジションで知られるカインズが、なにゆえネットでバズったのか。それは、同社のオウンドメディア「となりのカインズさん」中のコンテンツ「深掘り! カインズ研究所」の内容が、なんだか“ヤバかった”からである。

 きっかけとなったのは、1月27日にあるTwitterユーザーが行った投稿。この投稿では、「カインズホーム公式、イカれてて草」なるコメントとともに、「深掘り! カインズ研究所」のスクリーンショットを掲載。

「IQ700の天才ながら、カインズ以外のことはなにひとつ知ら」ない“カインズ博士”、「カインズのアルバイトに来たはずが入り口を間違えてしまいそのまま研究所の研究員となった」“助手のギャル”、「カラスにいじめられているところを助手のギャルに助けられ、そのままギャルに舎弟入りしたオス猫」の“ねこじろう”……等々、少々アクの強いキャラのプロフィールが載せられ、大量のいいねが付いたのだ(2021年3月現在で7万6000超のいいね)。

「イカれてて草」との指摘を受けた当のカインズ公式サイトに飛び、「深掘り! カインズ研究所」を見てみると、「カインズ本社の地下深くに幽閉された謎の施設『カインズ研究所』。日夜、カインズにまつわるナゾやウワサの真相を3人の研究員が調査している」とあり、どうやらカインズに対する疑問などを解説するコーナーである模様。

 しかしその「深掘り! カインズ研究所」第1話では、カインズ博士がねこじろう用の猫砂におしっこをしてしまったことが発覚するシーンがあるなど、とても大手企業のオウンドメディアが手がけているとは思えない、「?」なトンガリっぷりが随所に。カインズ、どうしちゃったの……!?

 Twitter上ではくだんの投稿に対し、「香ばしすぎる」「赤塚不二夫のマンガに出てきそう」等々、この「深掘り! カインズ研究所」の持つ“圧”を指摘する声多数。はたして、ホームセンター大手のカインズがこんなにも“攻めすぎ”なコンテンツを作ってしまったのはなぜなのか? 株式会社カインズのデジタル戦略本部所属で、このオウンドメディア「となりのカインズさん」編集長の清水さんと、同社広報の西片さんに話を聞いてみた。

社内的に、「イカれた」とか「キチ〇イ」みたいな文言はダメだった

――今回ネット上でバズることとなった「深掘り! カインズ研究所」ですが、このコンテンツを作るきっかけはなんだったのでしょうか?

清水さん:2020年3月から準備を始め、6月11日に立ち上げた「となりのカインズさん」ですが、コロナ禍と完全に時期がかぶってしまったんですね。そのため、東京・表参道にあるデジタル事業部から、埼玉県本庄市にある本社へと向かうことさえできなくて。取材もできない、コンテンツもない……。そんななかで、キャラ立ちした登場人物の会話形式にすれば、少ない情報量でもコンテンツとして成り立つのではないか? という目的がありました。

 今回注目された第1話では、カインズとカインズホームという、同じチェーンで2つの店舗名があることについて説明しているのですが、普通の文章で書くと、内容が少ないし硬くなってしまうんですね。それを、悪くいえば“かさ増し”することで、ひとつの会話形式コンテンツに昇華したわけです。

――なるほど、コロナ禍における苦肉の策だったわけですね。

清水さん:当初はもっと過激な設定だったんですよ。ただ社内的に、「イカれた」とか「キチ〇イ」みたいな文言はダメ、ということになりまして……。

――そりゃそうでしょうね……。

清水さん:助手のギャルについても「“ギャル”って、ちょっと下品じゃない?」というような声もありました。出身地も、最初の設定では埼玉県本庄市じゃなかったですね。

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登場人物はアクの強いキャラばかり。第1話では、“IQ700の天才”カインズ博士が猫砂におしっこをしてしまったことが発覚するシーンがあるなど、とても大手企業のオウンドメディアが手がけているとは思えない。

「深掘り! カインズ研究所」、第1話は“オシッコ”、幻の第2話は“ウンチ”

 なお清水さんは、先に紹介した一般Twitterユーザーの投稿が行われた翌日の1月28日、同じくTwitte上で「この記事は設定がふざけてるわりに話題にならなかったから部内で小言いわれてて、2話以降は日和ってテキトーな内容になったシリーズ」と、このコンテンツに言及(笑)。「おもしろい記事の多くはお蔵入りになってるので見たい人が増えれば本当に準備してた第2話を公開しようかな」と、未公開のシリーズ第2話の公開を検討するなどとしている。この点についても聞いてみると……。

――清水さんがTwitterで言及されていた幻の第2話についてお聞きしたいんですが、これは具体的にはどのような内容だったのでしょう?

清水さん:第1話がオシッコの話だったので、第2話はウンチの話でいこうとしてまして。

――ウンチ!

清水さん:結構勉強になるいい内容なんですけどね。ただ、第1話が案外奮わず、部内で、「過激なことを言っているのに意味がないじゃん」となってしまいまして。最初からバズっていれば……。ただ、未公開のものはまだ全部で10本以上あるので、上司の許可が取れたら掲載したいなと思っています。

――では、今回バズったことについては、社内ではどのような反応がありましたか?

清水さん:それは僕も、西片さんに聞いてみたいですね。

西片さん:私たちも、ただ面白く読んでいたという感じでして……。周囲では、幻の第2話を読んでみたいという声は結構聞きますけどね(笑)。

――社内でも期待を集める幻の第2話、楽しみにしています! 

画一的な社内の雰囲気に対し、オウンドメディアによって一石を投じたかった

――そもそも、すでに立派な大企業である御社がオウンドメディア「となりのカインズさん」を立ち上げようとされたのは、なぜなのでしょう?

清水さん:もともとカインズは店舗周辺のリアル商圏が中心で、デジタルでのタッチポイントがあまりなかったんですね。だから、群馬や埼玉の方はカインズのことをよく知っているけど、店舗がほとんどない東京の方にはあまり知られていない。現在カインズは、「b8ta」(ベータ)というシリコンバレー系の企業(「体験型小売店」を標榜)の日本法人に出資して新宿のマルイさんや有楽町でもカインズ商品を購入できるようにしたり、「Style Factory」という都心部向けの小規模店を始めたりしているのですが、こうした都心部在住の方や若者層にも、もっとカインズに興味を持っていただきたいと。

 でも、今までウェブでカインズに触れる機会って、プレスリリースやニュースだけだったと思うんです。それを、みずからのメディアを持つことで、そういう層へのタッチポイントをもっと増やしていこうという目的があります。実際「となりのカインズさん」のコンテンツは、売上や来店にも貢献しているんですよ。

――なるほど。そのことによるカインズ自体への影響って何かありましたか? 社内の雰囲気とか。

清水さん:カインズってホームセンターですから、接客業が中心ですよね。だから、各店舗の店員はもちろん、本社の者もすごく礼儀正しいんですよ。それ自体は非常によいことなんですが、一方でみな、非常に画一的な考え方をする傾向もありまして……。

 そういった部分に対する反省もあり、2020年1月に東京・表参道にデジタル戦略本部を設置し、人材を100名以上採用したんですね。その半分近くが外国籍のエンジニアなんですが、こういった流れや、その結果としての今回の「となりのカインズさん」立ち上げをきっかけとして、多様性とか「個」を大切にする部分も、以前よりも強く出てきたとは考えています。「自由にチャレンジしようよ」「もっと面白いことをしていこうよ」といったような雰囲気ですね。服装規定も緩和されてきていますしね。

西片さん:2019年からカインズは「第3創業期」と銘打ち、3カ年の中期経営計画「PROJECT KINDNESS」を手掛けているところでして。そうしたなかで、先ほど清水が申しました通り、本社機能の一部であるデジタル戦略本部に多くの人材が入社したことが、社内の雰囲気にとって大いに刺激になっているということはあると思いますね。

清水さん:たとえば、著名ライターのヨッピーさんにお願いした「信長もビックリ! ホームセンターの野望2020」という記事では、カインズ以外の競合ホームセンターについても紹介しているんです。これって普通、オウンドメディアではあり得ないことだと思うんですけど、普通に掲載しているんですよ。

「となりのカインズさん」を立ち上げたばかりの頃は、ちょっとしたコンテンツでも逐一チェックをしていました。ですが、さまざまなクリエイターさんがカインズで“遊んで”くださるなかで、雑誌に紹介されたり、「第6回リテールプロモーションアワード」という賞を受賞したりして、社内的な評価も上がってまいりまして。だから現在では、「カインズ使って好きに遊んでください!」といったテンションにはなっていると思います(笑)。

――なるほど。挑戦する姿勢が芽生えるきっかけとなったわけですね。

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ヨッピー氏の「信長もビックリ! ホームセンターの野望2020」という記事では、カインズ以外の競合チェーンも紹介。オウンドメディアではあり得ないことで、同社の「自由にチャレンジ」「もっと面白いことを」という雰囲気が伝わってくる。(画像はカインズオウンドメディア「となりのカインズさん」より)

業界でも大注目の“事件”だった、DCM、ニトリによる「島忠TOB騒動」

 カインズがこうした変革を遂げつつあるなかで、ホームセンター業界にも“大激震”が起きている。2020年10月、「ホーマック」などのホームセンターを運営するDCMホールディングスが、同じくホームセンター大手で「島忠」「HOME’S」を運営する島忠に対して、TOB(Take-over Bid/株式公開買い付け)を実行し子会社化をすることを宣言。

 しかし、その後同10月下旬、インテリア小売大手のニトリホールディングスが、同じくTOBでの島忠の子会社化を宣言。この“TOB合戦”はメディアでも大きく取り上げられたが、最終的にはニトリが買収に成功、業種の垣根を超えたタッグを組むこととなった。

 当然ながら、同業であるカインズも、この一件には注目していたようだ。

――カインズでは、今回の島忠の一件をどのように捉えておられたのでしょうか?

西片さん:もともとホームセンターは生活用品をオールマイティに扱っている関係上、同業以外にもドラッグストアやライフスタイル系など、多くの業界の動向をチェックしています。今回、インテリア系であるニトリさんが、DCMさんに“待った”をかける形で島忠さんを買収したということについては、やはりかなりのインパクトがありました。弊社に限らず、多くのホームセンター系企業やその周辺企業は、大きな興味をもって今回の件を眺めていると思いますよ。

――やはり、注目を集めた“事件”だったのですね。では、コロナ禍が業界にもたらした影響はどうでしょうか? 飲食業界などはかなり厳しいようですが……。

西片さん:ホームセンターには生活必需品が揃っていますから、地震や台風などの災害が起きた時に強く必要としていただくことが多いんです。今回のコロナ禍においても、“ステイホーム”する上で、生活必需品の消費量が純粋に増えたことや、家に関係するものに目を向け直したという方が多くいらっしゃいますから、我々のような業種の需要は、むしろ高まっていると思います。

――最後に、今回ネットでバズったことをきっかけとして「となりのカインズさん」を知った方、興味を持った方に対して、何かメッセージがあればお願いします。

清水さん:ご飯のレシピの横に、害虫対策の記事があったりするような、ごった煮でカオスな感じのメディアなんですよね、「となりのカインズさん」って。先に紹介したヨッピーさんの記事を始め、『深掘り! カインズ研究所』以外にもさまざまな面白い記事がありますので、そちらも楽しんでいただければ幸いです。そして、ホームセンターに行った気分になっていただきたいです!

 過剰にとんがり気味の記事がオウンドメディアに掲載された裏には、時代に合わせて積極的に変化を遂げようとする大手企業の姿があるようだ。今後の「となりのカインズさん」編集方針について、「自社だけでなく、取引メーカー全体、ホームセンター業界全体を盛り上げるようなメディアにしていきたい」と語ってくれた清水さん。今後も多くのトガった記事を掲載し、我々読者を楽しませてほしいものである。

(文・構成=編集部)

 

【カインズ関連サイト情報】

「カインズ公式サイト」
URL:https://www.cainz.com/

「となりのカインズさん〜ホームセンターを遊び倒すメディア〜」
URL:https://magazine.cainz.com/

「深掘り!カインズ研究所〜カインズにまつわるナゾやウサワをしらべよう!」
URL:https://magazine.cainz.com/series/3483

BusinessJournal編集部

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