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松岡久蔵「空気を読んでる場合じゃない」

トヨタ、章男社長の暴走…広報が競合他社に関する報道に介入、メディアに“説明”要求

文=松岡久蔵/ジャーナリスト

 内容的には、昨年12月17日に開かれたオンライン懇談会で章男氏が日本自動車工業会会長としての立場から、政府が最近発表した2050年までに温室効果ガスを実質ゼロにする「カーボンニュートラル」についての発言を取り上げている。この懇談会では「電動化=電気自動車(EV)化という浅い認識をマスコミと政治家が広げている」という“アキオ劇場”が急に展開され、参加者したメディア関係者のひんしゅくを買ったことについてはすでに報じた

 中⽇新聞の記事では冒頭から、章男⽒の発⾔が「⼀部報道で、豊⽥⽒がガソリン⾞を廃⽌する⽅向性に反対姿勢を⽰し、あたかも政府と対⽴するような構図で描かれた」とした上で、「豊⽥⽒は本当に脱ガソリン⾞政策に反対し、政府批判を展開したのか。真意を探った」と始まり、章男⽒の主張がそのまま掲載されている。

 筆者は章男氏の「急速な電動化は日本の自動車業界にとってよいことではない」という主張自体は正しいと考えるため、それに沿って記事を組み立てることは問題ではないと考える。むしろ、この記事中で看過できないのは、中⾒出し「『エネ議論』狙い」の部分だ。「複数の関係者によると、今回の一連の発言は、日本がカーボンニュートラルという大きなハードルを乗り越えるために、社会全体の電動車への正しい理解を共有し、エネルギー政策の『大変革』についての議論を促すように一石を投じる狙いがあったとみられる」とあるが、トヨタ関係者からの働きかけに基づいて、こんなヨイショを地の文で書いているのだとすれば、「特報記事」どころか、単なる広告記事である。

 情報誌「ファクタ」が3月5日に「トヨタ章男の奇行に愕然」という号外速報をオンラインで公開した。この記事によると、先月の日本経済新聞社主催の「日経スマートワーク大賞2021」の表彰式で、章男氏が突然会場を訪れ、大賞にトヨタが選ばれたにもかかわらず、日経の岡田直敏社長に向かって普段の⽇経の報道姿勢への批判を始め「出入り禁止だ」などと悪態をつき、場の雰囲気をぶち壊したという。

 これまでの章男氏のマスコミ批判は、記者会見や懇談会など自社の活動の範疇にとどまっていたが、今回が決定的に違うのは、表彰式には章男⽒の⽇経に対する不満とはまったく関係のない企業の担当者も出席していたところだ。自分のストレス解消のために、他人の晴れの場を台なしにするとは、経営者云々というより、もはや社会人として失格である。

 圧倒的な社会的影響⼒にともなう説明責任がありながら、報道機関を敵視し、あれこれ批判されると逆ギレする。そのくせ、⾃分はマスコミだろうが業界違いの他社だろうが業務妨害や迷惑⾏為をしても許されるというのは、さすがに傲慢も過ぎるというものだろう。

 章男⽒本⼈は巨⼤企業の創業⼀族として苦労したことを強調するが、それはそれとして、⽇本社会がそういう特別な出自ではない一般人が圧倒的多数を占める以上、最低限の礼節や常識は⾝に着けてほしいものである。「国⺠⾞」をつくってきたトヨタなら、なおさらではないか。

(文=松岡久蔵/ジャーナリスト)

松岡久蔵/ジャーナリスト

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Kyuzo Matsuoka


ジャーナリスト


記者クラブ問題や防衛、航空、自動車などを幅広くカバー。特技は相撲の猫じゃらし。現代ビジネスや⽂春オンライン、東洋経済オンラインなどにも寄稿している。


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Twitter:@kyuzo_matsuoka

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