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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

中国、日本人ら外国人に肛門PCR検査、その方法とは?外交問題に発展か、医学的根拠に疑問

取材・文=相馬勝/ジャーナリスト
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「Getty Images」より

 中国の保健当局が中国に入国する外国人に対して、新型コロナウイルスのPCR検査として、肛門から検体を採取する方法を行っていることがわかり、日本やアメリカ政府などが正式に抗議していることが明らかになった。

 在中国の日本大使館は「受けた人は多大な心理的苦痛を受けている」などと述べて、日本人には肛門検体PCR検査は行わないように中国外務省に申し入れている。しかし、中国外務省の汪文斌副報道局長は最近の定例会見で「中国は感染情勢の変化に応じ、防疫対策を科学的に調整している」とだけ答えており、現時点で、検査方法を変えるとの回答は得られていない。このため、ネット上では「当分、中国には行かないほうが無難だ」などとの声が出ている。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(中国語電子版)によると、米国務省は2月、一部の米外交官が中国に入国する際、「空港で、肛門PCR検査を受けざるを得なかった」として中国政府に抗議したことを米メディアに明らかにしたが、中国当局はそれを否定している。

 日本の当局者も今月1日、中国外務省に日本国民に対しては肛門検体PCR検査を免除するよう正式な要請を行っており、これについては、中国は認めている。日米両国の抗議について、中国当局の対応が違う理由は不明だ。

 中国共産党機関紙「人民日報」傘下の環球時報など中国国営メディアは、首都・北京や上海、港湾都市の青島などが一部の外国人に対し、鼻孔や咽頭に加えてこうした肛門によるPCR検査を行っていると報じており、肛門検査の“被害”を受けているのは、日米両国民ばかりではないようだ。

 ロイター通信によると、この検査は無菌の綿棒を肛門内部に3センチから5センチ挿入した後、やさしく回転させて取り出す方法をとっている。中国疾病対策センターはこれについて「新型コロナウイルスの痕跡が検知可能な時間が気道より肛門のほうが長いため、確実に検知できる方法だ。鼻やのどによる検査に比べ精度が高く、感染者の見落とし防止につながる」と説明しているという。

 しかし、香港大学のジン・ドンヤン教授(ウイルス学)はロイター通信に対して、「結果が陽性であっても、検査を受けた人が必ずウイルスを拡散し得るわけではない。複製できず他人に感染させられない不活性化したウイルスの痕跡が見つかっても、陽性と判明する場合があるからだ」と指摘している。

 また、欧州のある専門家もロイター通信に「確かにウイルスは鼻孔からよりも肛門から採取した検体において、より長時間とどまるとはいえ、回復期にある患者の場合、もはや感染リスクを生み出さない以上、あえて肛門検査をする医学的な意味はない」との見方を示している。

 中国は新型コロナウイルス感染をめぐって世界で最も厳しい感染予防対策を敷いて、感染拡大を抑制したとされているが、肛門検体PCR検査が外交的にどのような結果を生むかをもっと慎重に考慮すべきではないだろうか。

(取材・文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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