デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー

 ニチイ学館に5%未満を出資して少数株主の一角を占めていたリム・アドバイザーズが特に問題視していると見られるのが、1株当たり1670円という買い付け価格だ。同社は合理的かつ公正な価格として2400円を主張していた。

 価格の決定についてニチイ学館は20年5月8日、公正性を担保するためだとして、第三者算定機関及びファイナンシャルアドバイザーとしてデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社(DTFA)を選んだ、と発表。DTFAの助言を受けて当初は買い取り価格を1500円に設定した。その後、買い取り価格を1670円に引き上げ、TOBの終了日も20年8月3日から同17日にまで延長してTOBを成立させた。

 しかし、同社が第三者として本当に公正な価格を算定したのかとの証言が出始めている。これが3つ目の疑念だ。DTFA関係者がこう語る。

「(ファイナンシャルアドバイザーの契約を結ぶ直前の)3月にグループ会社も含めて全社員向けに、ニチイ学館系の家事代行サービス会社『サニーメイドサービス』から特別優待として無料でサービスが受けることができるとの連絡が来た。あとでニチイ学館と契約したことを知って、こんな無料サービスで利益供与を受けていては第三者としての中立性が保持できるのか疑問を感じた」

 ある大手コンサルティング会社の役員は「これが事実だとしたら、許される行為ではない。信じられない話だ」と指摘する。DTFAといえば、4大監査法人系のデロイト トーマツ合同会社のグループ企業だ。同社は監査や企業統治(ガバナンス)対応のプロ集団といっても過言ではなく、日本の有名大企業をクライアントに抱えて信用もある――。そう思いたいところだが、コンサルティング業界では「中央官庁の一部では出入り禁止状態になっている」(別のコンサルティング会社中堅幹部)といった声も漏れてきて驚くばかりだ。

 その中堅幹部によると、同じグループ企業のデロイト トーマツ コンサルティング合同会社(DTC)は防衛省などに出入り禁止になっているという。その理由は18年9月にグループを束ねるデロイト トーマツが、アジア地域統括会社のデロイト アジア パシフィック(AP)の支配下に置かれるようになり、APの主要幹部に中国共産党幹部の女性がいたからだ。このため、防衛省は将来戦闘機の開発に関する調査研究についてDTCと交わしていた契約を停止したという。防衛省は中国への情報漏洩を恐れて出禁にしたのだろう。

「19年春に日本のデロイトとAPとの関係の話が各省庁の事務次官を集めた会議で話題になり、当時の菅義偉官房長官からデロイトには注意するようにとの指示が出た」(中堅官僚)とのことで、情報が一気に広がり、政府調達からデロイトを締め出す動きにつながった。

 この問題については日本経済新聞が19年6月21日付朝刊の一面で報じた。防衛省から他省庁にも「飛び火」したため、DTCは「川原均経営会議議長が、APの女性は全人代(国会)所属ではなく中国人民政治協商会議の所属だから大丈夫です、と必死に火消しに回っていましたが、それが逆に失笑を買い、信用をさらに落とした」(前出、中堅官僚)。同会議は「統一戦線」であり共産主義を対外的に広める活動などをしている。現在の同会議主席の汪洋・元副首相は党内序列4位だ。全人代所属ではないから大丈夫という理屈が通るはずもない。