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松岡久蔵「空気を読んでる場合じゃない」~CAが危ない!ANAの正体(1)

ANA、CAのメンタルを崩壊させる「相互監視システム」と「見せしめ的評価制度」

文=松岡久蔵/ジャーナリスト
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私は、ソーシャルメディアに投稿する場合には、会社にかかわるすべての情報(業務上知り得た情報や関係する写真等を含む)を記載することはいたしません。以下に示される情報は、 退職後を含め、第三者(限定公開先となっているSNS上の友人を含む)に対して絶対に開示しません。

(1)お客様にかかわる全ての情報(公人、私人を問わない)

(2)客室乗務員であることが分かる、または推察できる情報

(3)安全保安にかかわる全ての情報(イレギュラー関連、暗証番号等、推察、推測を含む)

(4)職場の状況または雰囲気にかかわる情報

(5)業務内容を含めた職場に関する愚痴、不平不満、マイナスな感情表現(乗務、調練等を含む業務全般、お客様対応にかかわる抽象的表現を含む)

(6)社外に公表していない内部の情報(営業戦略、経営計画、新サービス等)

(7)業務上必要となる内部の資料(ICAD、各種規定手順書・実績等)

(8)会社の福利厚生情報(特に優待航空券は家族親族の投稿も厳禁)」

 この確認書について、(1)(3)(6)(7)(8)については理解できるとして、問題は(2)(4)(5)だ。(2)は別にわかったとしても問題のある発言などをしなければよく、個人の自由の侵害ではないかとの疑問がわいてくる。(4)(5)は表現があいまいな上、例えば匿名のツイッターなどで会社の愚痴や不満、問題点を書き込む自由もなくなることになる。つまり、ANACAである以上は社内外に余計な情報発信せずに「黙々と働け」というわけだ。しかも、退社後も外部にあらゆる内容について漏らしてはいけないことにも同意させており、徹底している。

 一方のJALについては、非常に簡素だ。以下が入社時の確認書。

「私は、ブログやSNSに書き込みを行う場合には、会社の信用を害することがないよう最大限の注意を払います また、業務上知り得た情報を会社の許可なく社外メディアやSNSを含むインターネット上の体に情報発信したりあるいは出版したりすることはしません。

・安全、航空保安、 営業上の機密等に直接関わる内容

・社外に流出することで会社の名誉や品位を傷つけかねない内容

・業務に関し、お客さまを含む社外の問覧者に不快感や不信感、誤解を与えかねない内容

・海外地区においては、各国の法令を基に必要に応じて読み替える等お願いします。

以上の内容を確認しました」

 いかがだろうか。ANAとは違い、業務に関する守秘義務などを守ってさえいれば、SNSでCAであることを公開することや、個人的な意見を述べることを禁止する規定はない。ANAが「愚痴や不平不満」と具体的に表現の幅に言及していることからすれば、雲泥の差だといわざるを得ない。

隣組組織「班」でCAを統制

 不平不満を言いにくい組織風土であることが濃厚なANAであるが、それには戦前に存在した近隣住民同士で相互監視し合う隣組ともいうべき「班」というシステムが、同僚同士の統制に大きな役割を果たしているという。以下は30代CAの解説。

「班は一つ当たり8〜10人で、毎月約2回国際線を一緒に乗務し、3カ月おきに班会という集まりを開くのが基本的な活動内容になります。班内ではそれぞれに役割があり、上下関係は年次順に徹底していて、後輩の目標や課題など成長度合いは先輩が必ず把握しています。

 年1回の定期訓練、サービス訓練の結果のほか、班以外のフライトで起きたトラブル、失敗、クレーム等の出来事を班長と管理職に報告する必要もあり、これもすべて把握されています。成長スピードが他の人と比べて遅かったり問題があったりした場合、フライト後に何時間も反省会を先輩とさせられたり、休日に先輩に呼び出されたり、休日にメールの返信を強要してくる先輩もいます。

 班がさながら小さな会社のようになっていて、班内での人間関係に悩み、仕事に来られなくなる人、鬱の症状が出る人がいます。入社後1~2年で、同期20人中複数が心の病で長期でお休みしたという話も聞きましたし、前年度お休みしてたという方や、班員がメンタルで突然長期休暇をとったという話もよく聞きます。班長や管理職は自分の管轄下グループ内で問題が起きないこと、問題児がいないことが自分の成績に関わってくるため、締め付けプレッシャーが必然的に高まる構造になっています。

 班は1年に1回変わります。ただ前の班から個人情報が引継ぎされるため、個人の成績や就業態度などすべて新しい班長と管理職に把握されることになります。

 このような環境で、先輩に意見を言ったり、本音で管理職と話すというのは非常に難しいといわざるを得ません。記録されてずっと引き継がれるくらいなら、波風立てず、平和に生きていく道を選ぶCAがほとんどです」

 筆者の取材によると、JALでも班活動自体は存在するが、ANAのように相互監視の意味合いが強い集まりではなく、あくまで業務でのメンタルヘルスなどを確認するためのグループ活動という性質が強いというのが現状のようだ。冒頭のSNSの書き込みが発見されたのが「密告」であるとの可能性については触れたが、このようなCAの相互監視体制の下では十二分にあり得る話だろう。

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