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総務省接待問題は氷山の一角、ロビー活動に勤しむ“波取り記者”…テレビ局・新聞社の現実

文=編集部
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総務省公式サイトより

 総務省幹部への接待問題についてNTTの澤田純社長と東北新社の中島信也社長は15日、参議院予算委員会に出席し陳謝した。総務省と放送・通信業界の癒着の構図に関する全容解明を求める声が多数上がる中、Twitter上ではひっそりと「波取り記者」という言葉が注目を集め始めている。

記事を書かない、電波利権確保に奔走――「波取り記者」とは

「波取り記者」という言葉は3年前の2019年3月4日、総合オピニオンサイト「iRONNA」の記事『電波利権「波取り記者」の恐るべき政治力』で明らかになっていた。内閣官房参与で嘉悦大学教授の高橋洋一氏が、06年ごろ総務大臣補佐官を務めていた経験をもとに、「iRONNA」記事内で以下のように指摘していた。

「総務省在籍当時、筆者の仕事部屋は大臣室の隣にある秘書官室だった。筆者とは面識のない多数の方が秘書官室に訪れ、名刺を配っていく。筆者も秘書官室の一員であるので、名刺を頂いた。それを見ると、メディア関係の方々だ。その中には『波取り記者』と呼ばれる人も含まれていた。

 『波取り記者』の『波』とは電波のことだ。『波取り記者』とは、記事を書かずに電波利権確保のために電波行政のロビイングをする人たちだ。こうした人は新聞業界にもいた。

 彼らの政治パワーは強力であり、その結果として上に述べたように改革が全く進まなかったのだ。これは、日本の電波・放送行政が先進国で最も遅れた原因である」

「波取り記者」と総務省幹部との癒着こそ問題

 高橋氏は今月4日にもYouTubeの自身のチャンネルで、一連の総務省接待と「波取り記者」の問題に触れている。

 つまり、NTTや東北新社による総務省幹部への接待疑惑は氷山の一角で、大手テレビ局などが自社の電波利権のため周波数帯を確保し、他社の参入を防ぐことを目的に総務省記者クラブにロビイング担当者を配置。事業者の代理人として、同省幹部に接待を繰り返しているというのだ。

 上記動画で高橋氏は「(国家)公務員倫理法では、記者は利害関係者ではないと一応書いてある。ただし、『波取り記者』は記事書いていないから記者じゃないんだよ。私の法律的な感覚からすると利害関係者」と語る。

 本当に「波取り記者」は存在するのか。キー局記者は口を濁す。

「ネットで言われている総務省記者クラブの件でしょう……。あそこは政治と経済、両方のセクションの担当者が常駐しています。確かに普段、なにをしているのかわからない人はいるみたいですね。でも地下に潜って取材している記者は他の記者クラブにもいますし、接待というか、個人的に官僚と飲みに行ったり、ゴルフをしたりする記者はたくさんいますよ。それも取材の一環でしょう。記事を書いているかどうかですか? 話を聞いてメモ出しはしているんじゃないですか。そもそも記者は官僚の利害関係者ではありませんよ」

 また、全国紙記者は話す。

「他社さんでは、確かに営業から記者職に異動して官公庁の記者クラブ担当になる社員はいます。総務省記者クラブかそうだということではありませんよ。会社のコンプラもあるのでちゃんと割り切って取材活動をしているんじゃないですか」

「記者は倫理規程の利害関係者にならない」のは本当か

 総務省にいる「波取り記者」ではなくても、取材活動を逸脱している事例もあるようだ。農林水産省の幹部職員は次のように語る。

「数年前、ある新聞の農政担当記者に私の部署の事業を記事化してもらったことがありました。ところが記事掲載後、その記者から『こちらの部署で、うちの新聞を購読していただけませんか』と勧められたんです。販売から発破をかけられていて、取材の合間に購読営業をやっているということでした。私が『国家公務員倫理法に抵触する可能性があるからマズイ』と言ったら、『意味がわからない』というような顔をしていましたね」

 国家公務員倫理規程国家公務員倫理法で「記者」はどのように位置づけられているのか。人事院国家公務員倫理審査会事務局の担当者は次のように説明する。

「国家公務委倫理規程第2条の『利害関係者』では、テレビ局や新聞社の記者が『利害関係者に当たらない』とする明確な記載はありません。ただし倫理規程2条には許認可などの『権限』に関する記載があります。一般的に記者は、各省庁の許認可を受けて取材をしたり、補助金をもらって活動をしたり、省庁と直接契約をして事業をやったりしていないはずなので『権限関係が発生しにくい』という解釈ができます。

 一方で、記者が絶対に利害関係者にならないかというと、そうではありません。国家公務員倫理法2条6項に『事業者等の利益のためにする行為を行う場合における役員、従業員、代理人その他の者は、前項の事業者等とみなす』となっています。

 例えば、記者であっても取材活動ではなく『うちの新聞買ってくださいよ』などと会計課長さんのところに行ったら、それはいくら当人が『取材活動だ』と言っても、倫理規定に掲げている『契約を申し込もうとしている相手方』となります。だから、『記者が利害関係者になるということは100%ない』とは言えません」

 総務省幹部への接待問題の本丸はどこなのか。ことの推移によっては、マスコミ各社の自浄作用の有無も問われることになるのではないか。

(文=編集部)

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