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伊藤忠、日本の脱炭素のカギ握る…画期的なビジネス開始、排出枠取引市場の育成の起爆剤に

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 それに加えて伊藤忠に期待したいのが、より多くの企業との連携だ。日本ではブロックチェーン(分散型元帳)を用いてインターネット上で、家庭が削減した排出量の取引に取り組む企業がある。伊藤忠の持つ家庭の発電データなどがそうしたネットワークと結合することは、取引拡大を支えるだろう。それは、日本の排出枠取引市場に深みをもたらす要因になり得る。

 そうした展開が現実のものとなれば、排出枠取引は増え、社会全体で脱炭素への意識は一段と高まるだろう。取引市場の育成が進む結果として、海外の企業などが日本から排出権を購入するケースが増加することも考えられる。伊藤忠にはマーケット・デザインの主体的な役割が期待されているといってもよいだろう。

 見方を変えれば、伊藤忠の蓄電システム事業は“三方よし(売り手によし、買い手によし、世間によし)”を体現する取り組みといえる。一つの展開として、各社の取引プラットフォーム上でポイントの互換性が進むなどして参加者が増えれば、より多くの家庭が排出枠取引に参加して脱炭素への取り組みが加速することが考えられる。そうなれば、伊藤忠などが取り組む排出枠の取引は社会的共通資本(持続可能なゆたかな社会を支える仕組み)としての役割を担うだろう。そうした展開を念頭に、伊藤忠が、排出枠取引に参画する企業との連携を強化し、取引のルールなどを統一化することを期待したい。

(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

●真壁昭夫/法政大学大学院教授

一橋大学商学部卒業、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学大学院(修士)。ロンドン証券現地法人勤務、市場営業部、みずほ総合研究所等を経て、信州大学経法学部を歴任、現職に至る。商工会議所政策委員会学識委員、FP協会評議員。

著書・論文

『仮想通貨で銀行が消える日』(祥伝社、2017年4月)

『逆オイルショック』(祥伝社、2016年4月)

『VW不正と中国・ドイツ 経済同盟』、『金融マーケットの法則』(朝日新書、2015年8月)

『AIIBの正体』(祥伝社、2015年7月)

『行動経済学入門』(ダイヤモンド社、2010年4月)他。

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