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医学部受験9年浪人の女性、なぜ母親を殺害?医学部多年浪人のリスクと親の“教育虐待”

文=編集部
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 そうした状況を踏まえると、10~20代の貴重な時期を、医学部を目指して何年も浪人を重ねることに費やすことには賛成できません。実際に、現役や1浪で医学部に落ちた学生が看護学部や理工系学部に志望を変えて、翌年にはちゃんと合格していく事例はごまんとあります。そもそも医師に限らず、第一志望の職業に就ける人などほんの一握りなのですから、受験生も保護者も、広い視点といい意味での諦めを持つことが大切だと感じます」

 では、なぜ、母親はのぞみ被告を医学部へ入学させることに執拗なまでにこだわり、その結果、悲惨な事件が起きるまでに至ったのだろうか。『子どもを攻撃せずにはいられない親』(PHP新書)の著者で精神科医の片田珠美氏に解説してもらった。

片田医師の解説

 なぜ母親は娘に対して監禁まがいのことまでして、医学部入学にこだわったのでしょうか。

 まず、支配欲求が非常に強いことが挙げられます。一人娘のうえ、夫とは娘が小学校高学年の頃からずっと別居していて、「長年にわたり母子だけの閉鎖的な環境」だったようなので、母親の関心がすべて娘に注がれ、それに支配欲求が加わったように見えます。

 支配欲求に拍車をかけるのが「子どもに投資している」という意識です。母親は娘に幼い頃から通信教材を買い与えていたようですので、子どもにお金をかけてきたと思っていたはずです。そう思っている親ほど、「あれだけ時間とお金をかけて育ててきた子どもなのだから、多少は思い通りに支配させてもらってもバチは当たらないだろう」と自らの支配欲求を正当化しやすいのです。

 それでは、なぜ支配欲求を抱くのでしょうか。多くの場合、利得と自己愛がからんでいます。利得はわかりやすいですよね。母親の希望通り娘が医師になれば、高収入を得られる可能性が高いですから。

 より厄介なのは、親の自己愛、とくに傷ついた自己愛です。娘は、「47NEWS」記事の取材に対し「母は工業高校を卒業したそうです。最終学歴が高卒であることを悔やんでいると何百回も聞かされました。学歴コンプレックスがあったのだと思います」と話していますが、このように何らかのコンプレックスを抱いている親ほど、子どもに代理戦争を戦わせ、敗者復活をめざそうとします。平たくいえば、自分の果たせなかった夢を子どもに託すわけです。ですから、親の期待というのは、実は親の自己愛、とくに傷ついた自己愛の投影にほかなりません。

 しかも、支配欲求の強い親は、往々にして所有意識と特権意識も強いのです。子どもを自分の所有物とみなしているからこそ、自分の好きなように扱ってもいいと思い込み、殺害された母親のように娘を医師にしたいという自身の欲望を押しつけ、9年間も浪人させるわけです。

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