NEW

徳川慶喜の夫人たち…維新から31年後に慶喜と明治天皇が交わした“兄弟の杯”の意味

文=菊地浩之
【この記事のキーワード】, , ,
【確認中】明治天皇は徳川慶喜の義弟…維新から31年後に交わした“兄弟の杯”、そして慶喜は公爵への画像3
NHK大河ドラマ『青天を衝け』では、徳川慶喜を草なぎ剛、一条美賀子を元AKB48の川栄李奈が好演している。美男美女のカップル誕生だ。(画像は同番組公式サイトより)

徳川慶喜と結婚した美賀子に恋のライバル登場、それは、一橋徳川家の先々代の未亡人、徳信院であった

 ともあれ、安政2(1855)年12月、慶喜と美賀子は婚礼を挙げた。美賀子21歳、慶喜19歳(数え年)。美男美女のカップル誕生である。慶喜は美男子で有名だった。若かりし頃、江戸城に登城すると、大奥の女子たちがキャアキャア騒ぐので、「余は有栖川宮の孫なるぞ(だから、甘く見るなよ――ってことなのだろうか)」と言ったとか、言わなかったとか。

 先述したように千代姫は自害してなかったので、「呪い」はなかったのだが、美賀子の前に恋のライバル(?)が立ちはだかり、幸せな新婚生活とはいかなかった。

 慶喜が11歳で一橋徳川家に養子に入った時、先々代の一橋徳川慶寿(よしひさ)の未亡人・徳信院(演:美村里江)がいた。未亡人とはいってもまだ18歳。慶喜はこの7歳年上の徳信院を慕い、非常に仲がよかったという。美賀子が嫁いでくるまでの8年間、ともに過ごした仲である。

 この両人の親密な仲に、新婚当初の美賀子が激しく嫉妬して、ヒステリー状態になったらしい。そして、狂言かどうか定かではないが、自殺騒ぎまで起こしたという。

 しかし、結婚4年目の安政5(1858)年7月、美賀子は女の子を産んだ(のだから、この頃には夫婦仲は安定していたのだろう)が、その日のうちに早世。その後も4人の子どもを授かったのだが、いずれも夭折したという。「やっぱり、千代姫の呪いなんじゃないの?」って思うよね。違うんだけど。

 では、「慶喜のあとは根だやし」になったかといえば、さにあらず。慶喜は2人の側室と10男11女、計21人の子どもをもうけた。明治維新後の慶喜の仕事は子作りだったと揶揄(やゆ)されるくらいの子孫繁栄である。

 側室がいたってことは、正室・美賀子との仲はまた悪くなったの? と思うのは現代人の考え方で、2人の仲は円満だった。

 慶喜は将軍在位の間、京都・大坂で奔走し、江戸には不在だった。美賀子は大奥には入らなかったものの、江戸住まいだったので、ずーっと別居していたわけだ。その後、慶喜は朝敵となり謹慎。寛永寺から水戸を経て静岡に移った。明治2(1869)年に謹慎が解除され、美賀子を静岡に呼び寄せた。お互い頼れる者が少なくなったことで、より愛情が増したのだろう。夫婦仲は良好になったという。

 明治24(1891)年に美賀子に乳ガンが見つかり、3年かけて4回手術をしたが、容態は好転せず、結核も発症。明治27(1894)年7月に肺炎で死去した。享年60。

明治天皇は徳川慶喜の義弟、35年ののちに交わした“兄弟の杯”、そして慶喜は公爵に列せらる

 美賀子の死から2年、慶喜も還暦を迎えた。老齢と健康不安から、明治30(1897)年に慶喜は静岡から東京へ転居する。旧大名や親戚筋はみな東京に住んでいたから、交遊が増え、かつての朝敵だった慶喜の名誉が徐々に回復されていく。

 翌明治31年2月に慶喜は宮中へ参内。明治天皇との酒宴に及んだ。酒宴では美子(はるこ)皇后がお酌をしていたという。美子は忠香の三女で、美賀子の養妹にあたる。つまり、慶喜と明治天皇は義理の兄弟なのだ。

 一説には、慶喜が帰った後、明治天皇が伊藤博文に「伊藤、俺も今日でやっと今までの罪ほろぼしができたよ。慶喜の天下をとってしまったが、今日は酒盛りをしたら、もうお互いに浮き世のことで仕方がないと言って帰った」と語ったと伝えられる。

 明治35(1902)年6月に慶喜は公爵に列し、名誉回復は成就。維新から35年もの月日が経っていた。

(文=菊地浩之)

家康はなぜ「徳川」を名乗ったか…ニューイヤー駅伝から考える、群馬に徳川町があるワケの画像3

●菊地浩之(きくち・ひろゆき)
1963年、北海道札幌市に生まれる。小学6年生の時に「系図マニア」となり、勉強そっちのけで系図に没頭。1982年に國學院大學経済学部に進学、歴史系サークルに入り浸る。1986年に同大同学部を卒業、ソフトウェア会社に入社。2005年、『企業集団の形成と解体』で國學院大學から経済学博士号を授与される。著者に、『日本の15大財閥 現代企業のルーツをひもとく』(平凡社新書、2009年)、『三井・三菱・住友・芙蓉・三和・一勧 日本の六大企業集団』(角川選書、2017年)、『織田家臣団の系図』(角川新書、2019年)など多数。

情報提供はこちら

RANKING

11:30更新
  • ジャーナリズム
  • ビジネス
  • 総合