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中曽根陽子の教育最前線

不登校18万人…理想を追うオルタナティブスクール・WING SCHOOLの挑戦

文=中曽根陽子/教育ジャーナリスト、マザークエスト代表
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 田上さんはそれをレストランにたとえて、「不登校の子は、そのレストランはまずいから行きたくないと思っているだけだけれど、学校は、発達障害で味覚がおかしいから食べられないとか、しつけができていないから別室で食べさせるというように、ちょっと偉そうなレストランになっている。でも、休日に行くレストランには、子どもは喜んで行くから親としてはモヤモヤしている」と言います。

 確かに、生徒をお客様だと捉えれば、そのお客のニーズに合わせた料理を提供できないというのは、学校の課題です。

 さらに、「これまでは『学校は嫌でも行くもの。勉強は、将来のために嫌でもやるもの』と先生も親も思い込んできたところがあります。『子どもが喜んでいく学校。休みたくない学校』なんてイメージできないのです。でも、ここにはそういう姿があります。子どもがいきいきと変化する様子を見てもらうことで、マインドを変えていきたい」と田上さん。

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着物を着て水前寺公園に行ってみるプロジェクト

知性を育てる授業と感性や創性を育む自然体験とプロジェクト学習

 では、WING SCHOOLではどのような教育が行われているのでしょう。

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 午前は熊本市立の学校が採択している教科書を併用しつつ知性を育てる授業。午後はプロジェクト学習にあてています(小学3年生は午後自然活動。小学1・2年生は午前自然体験・午後授業)安心できる環境のもと、感性・知性・創性を育み、子どもたちが幸せな未来を築く力を育てることを教育の目標に置いています。

 これまでの教育は、知性のところが大きすぎる。受験勉強はするが、その割には本当の知性が身につかない。また、学校行事も先生が決めてしまって生徒は参加するだけで、創造性を発揮する機会がない。

 反対に、多くのフリースクールでは、感性を育てる部分が大きすぎて、授業で知性を育てる時間が少ないから学力が身につかないため、自己肯定感が下がる様子がみられる。一方

 WING SCHOOLでは、生徒と先生が上下関係でなく、ニックネームで呼びあうフラットな関係性の中で、自分らしさを発揮できる環境を用意し、自然体験の中で感性を磨き、授業等を通して知性を磨き、イベントや行事を子どもが企画運営していく中で、夢を実現していく力を身につけていくのです。

 動画で中学生の英語の授業の様子を見せてもらいましたが、生徒たちがドラマ仕立ての寸劇を自ら創りとても楽しそうに演じていました。

「全員が元不登校で、合わないレストラン(学校)に無理やり頑張って行こうとして苦しんでいたが、自分に合うレストラン(WING SCHOOL)に出合えて輝けた。こんなに感性豊かな子が引きこもっていたら社会の損失だ」(田上さん)

 その話を聞いて、安心できる環境のなかで、感性が開かれた上で知性が身につくと、こんな空気感が生まれるのかと、びっくりしました。帽子やマスクを身につけないと不安で居られないという子どもが、ここではそれも許され、特別視されず安心して過ごしているうちに、自然とマスクも帽子もいらなくなる。そんな例は後をたたないのだとか。「多様な子がいるのに、同じ環境に押し込めているのが今の学校だ」という話を聞いて、それが当たり前と思い込んでいるところが、自分にもあるなと改めて自覚しました。日本はまだまだ、一律すぎるのかもしれません。

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中学生の英語の授業風景
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お誕生日会は大切な行事 焼き芋と焼きマシュマロでお祝い

子どもが主体のプロジェクト学習

 WING SCHOOLのもう一つの大きな特徴が、プロジェクト学習です。子ども達が、自主的にイベントや行事の企画をし、その運営を通して、起業家スピリットや夢を実現する力を身につけていきます。

 スクール内外で、お店を出してものを売るマルシェプロジェクト。ペットボトル筏で川下りプロジェクト。最長片道切符で、北海道から山口まで移動するプロジェクト。劇を作って発表する演劇プロジェクトなど、これまでに生徒発案のプロジェクトがいくつも立ち上がり、それをやりたいという異学年の生徒が集まって、実現に向けて活動をしています。

「京都まで歩いていく」というプロジェクトが立ち上がったときも、最初からそれは無理だと止めません。最終的には、「京都で歩こう」というプロジェクトに収まったそうですが、実行に関しても教師は一切口を出さず、現地でも生徒の引率についていったそうです。その結果、ホテルの予約が翌月になっていたというハプニング付きになったそうですが、「そういうやらかし、失敗の経験から掴んだことが身になるのです」と田上さん。

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