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ZHD、事前にLINE問題を把握しつつ経営統合を強行…狂うPayPay経済圏構想

文=編集部
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LINEのサイトより

 政府は、無料通信アプリLINEの個人情報が中国の関連会社からアクセスできる状態にあった問題の調査に乗り出した。総務省は3月19日、LINEに対し、電気通信事業法に基づき事実関係などを1カ月以内に報告するよう求めた。

 政府の個人情報保護委員会も同日、LINEと親会社のZホールディングス(HD)に個人情報保護法に基づき報告を求めた。提出期限は3月23日。LINEとZHDが提出した資料をもとに個人情報保護法違反にあたるかどうかを検証する。必要に応じて処分を検討する。

 総務省は同日、LINEを使った行政情報の発信などを当面中止すると発表した。武田良太総務相が閣議後の会見で明らかにした。同省では採用活動や意見募集などにLINEを使っている。また、同省は全国のすべての自治体に、26日までにLINEの利用状況を報告するよう求めた。こうした事態を受け、大阪市や千葉県、高知県などの自治体は公式アカウント経由のLINEの利用を一時停止した。

個人情報保護がずさん

 3月17日付朝日新聞が、LINE利用者の個人情報に中国の関連会社からアクセス可能だったと報じた。サービスに使う人工知能(AI)やシステム運用の社内ツールなどの開発を、LINEは上海の関連会社に委託。中国人スタッフ4人がシステム開発の過程で日本のサーバーに保管される「トーク」と呼ばれる書き込みのほか、利用者の名前、電話番号、メールアドレス、LINE IDなどにアクセスできるようになっていた。こうした状態は2018年8月から続き、4人は少なくとも32回、日本のサーバーにアクセスしていた。

 LINEは20年1月から、LINE掲示板の不適切な書き込みなどを監視する業務を日本の通信業務代行会社に委託。この業者が中国・大連の企業に再委託していた。米国と中国の技術覇権争いの激化で、日本でも中国の国家ぐるみの情報管理体制に警戒する動きが強まっていた。そのため政府は、いち早く動いた。

 利用者間でメッセージをやりとりできる「トーク」に投稿されたすべての画像や動画が、韓国内のサーバーに保管されていたことも明らかになった。サーバーはLINEを実質的に傘下に置く韓国IT大手ネイバーが所有。韓国にある子会社役員がアクセスできる権限を持っている。個人情報保護法では個人情報を国外の事業者に提供したり、海外からアクセスしたりする場合は利用者本人の同意が必要になる。グローバル企業は個人情報の取り扱いに、より慎重になっている。なぜ、LINEは徹底できなかったのか。

 LINEと統合する前のZHDに1月下旬、この問題に関する指摘があった。ZHDがLINEに照会したところ、委託先の中国企業から日本の利用者の個人情報が約2年半にわたり閲覧可能だったことが判明した。それにもかかわらずZHDは統合を延期しなかった。

 2019年11月の経営統合発表後、計画を延期し21年3月に5カ月遅れで統合が実現しようとしていた矢先だったからだ。個人情報の不備を理由に再延期することはできなかった。ZHDは3月19日、外部有識者による特別委員会(座長=宍戸常寿・東京大学大学院教授)を設置。データの取り扱いについてセキュリティーとガバナンスの両面から検証・評価する。

 ヤフーLINEはポータルサイトやネット通販、対話アプリなど国内で200以上のサービスを展開する。どのような個人情報をどういう目的で使うのかを今まで以上にわかりやすく利用者に説明する必要がある。

最大のスマホ決済事業が誕生へ

 ヤフーを傘下にもつZHDとLINEは3月1日、経営統合した。統合方式はかなり複雑。統合に先立つ2月28日、LINEの商号をAホールディングス(HD)に変更。AHDは戦略的持株会社として経営統合後のZHDの株式を65.3%保有する。ZHDとLINEが対等に経営統合するため、親会社のソフトバンクと韓国のネイバーがAHDの株式を50%ずつ保有し、AHDはソフトバンクの関連子会社になる。会長にはネイバーの創業者、李海珍(イ・ヘジン)氏、社長にはソフトバンクの宮内謙氏が就いた。

 ZHDの親会社はAHDで、ヤフーやLINEの事業会社はZHDの傘下となる。LINEはネイバーの連結から外れる。ZHDの共同最高経営責任者(Co-CEO)にはLINEを率いる出澤剛氏が就き、川邊健太郎・Co-CEOと2トップ体制となった。

 ZHDとLINEは国内事業が中心で、それぞれ100以上のサービスを手掛ける。まず国内で重複分野を見直す。22年4月にZHDのスマホ決済「PayPay(ペイペイ)」に「LINE Pay」の国内でのQRとバーコード決済事業を統合する。

「業界リーダーとしてPayPayが日本のキャッシュレス化を強く牽引していく」。3月1日の戦略方針説明会で川邊氏はこう力説した。18年前後から、キャッシュレス決済にネットや通信各社が相次ぎ参入し、大規模キャンペーンを展開。顧客争奪戦を繰り広げてきた。18年10月から始まったPayPayは「100億円」還元作戦で規模を拡大し、21年2月の登録者数は3600万人を超えた。LINE Payと合わせると7500万人になる。楽天ペイの5000万人を上回り国内最大を誇る。

 ZHDはグループの銀行、証券、カード、保険など金融サービスの名称をPayPayに統一し、アプリとの連携を深化させる。その重要な入口がLINE PayのPayPayへの統合だ。スマホ決済の一本化に走り出した途端、LINEの個人情報のずさんな扱いが明らかになった。事案の重大性にかんがみ、政府が乗り出してきた。

 22年4月にLINE PayをPayPayに統合できるのか。個人情報を保護する体制を再構築するには、かなりの時間を要するとみられている。

(文=編集部)

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