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永田町の「謎」 現役議員秘書がぶっちゃける国会ウラ情報

総務副大臣の元スタッフが持続化給付金詐欺で逮捕…永田町に跋扈する“詐欺師秘書”の正体

文=神澤志万/国会議員秘書
総務副大臣の元スタッフが持続化給付金詐欺で逮捕…永田町に跋扈する詐欺師秘書の正体の画像1
国会議事堂(「Wikipedia」より)

 国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。

 3月21日、国の持続化給付金を騙し取ったとして、総務副大臣の熊田裕通衆議院議員の元事務所スタッフら4人が逮捕されましたね。秘書ではなく、「スタッフ」というところが微妙です。

 主犯とされる加藤裕容疑者は党員拡大などを担当する「ボランティア」だったそうですが、2020年5月に「自民党の秘書」を名乗って給付金のセミナーを開催していたようです。「自民党という立場を使って抜け道を知っている」とかなんとか言って、大学生らセミナーの受講者に不正受給を持ちかけ、手数料収入を得ていたんですね。

 犯罪行為には一切関係がないのに名前を使われてしまう国会議員も被害者ですが、世間は採用責任を追及するので大変です。

手数料を要求されたら詐欺を疑うべき

 最近、国会議員の「元スタッフ」や「元秘書」の犯罪報道を目にする機会が増えている気がして、がっかりしますね。確かに、私たち秘書は地元の個人事業主さんなどからの相談で持続化給付金の交付手続きについて、お手伝いやアドバイスなどをさせていただく機会はありましたが、決して手数料などはいただきません。もちろん、他の陳情の対応などでも同様です。

 手数料を受け取ることは、税理士や会計士などの資格がない限り、違法になるからです。そもそも、手数料や謝礼がほしくてお手伝いをしているわけではなく、ボスである国会議員の「お困りの方々の力になりたい」という意向を反映して動いているのです。

 手続きに必要な実費をいただくことはありますが、あくまで実費のみです。もし、そういった場面で手数料を要求されることがあれば、「詐欺」を疑っていただきたいと思います。

 神澤は、「優秀そうな秘書」と「詐欺師」は紙一重だと思っています。この加藤容疑者も、おそらく学生たちがまったく疑問を持たないほど弁舌さわやかな悪人だったのでしょうね。

 実は、永田町にはそういう輩はけっこういるんです。口がうまくて、寄付金や党員を集めたりすることに長けているので、ボスも「優秀な秘書だ」と思ってしまうことがあります。

 ちなみに、加藤容疑者は10年前くらいに結婚詐欺で逮捕された過去もあるそうですが、自民党の衆議院事務所はその前歴を見過ごして採用してしまったようです。神澤も、何度か怪しい人物の秘書採用面接に同席したことがあります。明らかに怪しいのにボスが採用しようとしたので、調査して結果を伝えて、全力で反対したこともあります。

 議員との信頼関係があれば、そういうことも感謝されますが、信頼関係がなければ「採用の邪魔をした」と恨まれることになります。とはいえ、たいがいそういう人は他の事務所で採用されて問題を起こしているので、自分の判断に間違いはなかったと思っています。

 特に記憶に残っているのは、1億円の強盗致傷で逮捕・起訴されている上倉崇敬容疑者ですね。上倉容疑者は、自民党の二之湯智参議院議員の公設秘書だった2010年に事件を起こしています。失職中にお金に困って……ならまだしも(よくはないですが)、公設秘書在職中ってすごいですよね。

 2016年に同じく強盗致傷で逮捕されて、懲役5年の実刑判決を受けて服役していたときに、手口が似ているとして調べられて再逮捕されたそうです。

 この上倉容疑者が、神澤のボスの面接に来たことがありました。しかも、直接ではなく地元の財界人を通すなど、手の込んだ方法で何度も来るんですよ。その都度やんわりとお断りしましたが、仲介した方の強い希望で実際に面接をしたこともあります。なんか信用できず、採用には至りませんでした。

 この上倉容疑者も口がうまいんですよね。佐藤ゆかり議員秘書をしていたときは、佐藤議員はどこに行くにも彼を随行させていましたし、参議院議員の事務所では公設登録までしていたのですから驚きです。強盗のほか、詐欺や窃盗も繰り返していたようです。

結婚詐欺で2000万円貢ぐケースも

 実は、神澤も秘書仲間に投資詐欺で騙されたことがあります。今にして思えば見抜けたはずですが、当時は財務副大臣の政策秘書だった彼を信用してしまいました。肩書を信じ、人間性を見極められなかったんですね。お恥ずかしい話です。

 また、公設秘書や政策秘書と聞くと結婚の条件としてよく見えるようで、独身と偽ってデートを重ね、不倫だとわかった途端に修羅場になる秘書もいます。中には、相手の女性が失意のあまり自殺された方もいます。これって結婚詐欺と同じですよね。

 本当に結婚詐欺の被害に遭った友人秘書もいます。秘書同士ということで信用してしまったのでしょうね。後からわかったのですが、友人秘書は2000万円も貢いでいて、現在も裁判で争っています。

 その裁判の過程でわかったことは、日本は重婚を認めていないのに「重婚状態は受け入れている」という衝撃の事実です。たとえば、一方が勝手に離婚届を出し、新たな相手と再婚するとします。後にそれがわかって離婚届の無効が認められると、その婚姻関係も再婚も有効と認められるのだそうです。

 戸籍上は、2人の配偶者が同じ人物という状態。「そんなのおかしいでしょ?」と思いましたが、国は何かをしてくれるわけではなく、あくまで当事者が家庭裁判所に申し立てて、どちらかを整理しないことには重婚状態が続くのです。このことは、また別途追及したいと思います。

 口のうまい秘書には、くれぐれもお気をつけください。国会議員の秘書である神澤が言うのもおかしいですが、みなさんにくれぐれもご理解いただきたいのは、国会議員の秘書は偉くもすごくもないということです。世間には、神澤のような政策秘書のことを拝むように接してくださる人もいます。多少、政治の世界に詳しく、法律にも詳しいというだけです。

(文=神澤志万/国会議員秘書)

『国会女子の忖度日記:議員秘書は、今日もイバラの道をゆく』 あの自民党女性議員の「このハゲーーッ!!」どころじゃない。ブラック企業も驚く労働環境にいる国会議員秘書の叫びを聞いて下さい。議員の傲慢、セクハラ、後援者の仰天陳情、議員のスキャンダル潰し、命懸けの選挙の裏、お局秘書のイジメ……知られざる仕事内容から苦境の数々まで20年以上永田町で働く現役女性政策秘書が書きました。人間関係の厳戒地帯で生き抜いてきた処世術は一般にも使えるはず。全編4コマまんが付き、辛さがよくわかります。 amazon_associate_logo.jpg

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