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江川紹子の「事件ウオッチ」第174回

河井克行元法相・参院選買収事件と安倍氏、菅氏、二階氏の“政治責任”【江川紹子の考察】

文=江川紹子/ジャーナリスト
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「自民党から得たカネをバラまいたのでは?」との疑問にも答えるべきではないか

 ただ、本件が終結した、といえるまでには、いくつもの宿題が積み残されている。

 まず河井氏本人については、国会招致に応じ、さらには記者会見を開いて、国民にことの詳細を説明する必要がある。法廷は、起訴事実についての刑事責任を審理する場だが、自らの口でことの次第の次第を正直に、詳細に説明する政治的責任はいまだ果たされていない。

 河井夫妻は、これまで事件について、自らの口で説明することをずっと拒んできた。地元の事務所に検察の家宅捜索が入った昨年1月15日の夜にようやく、それぞれ別々に、議員宿舎で報道陣のぶら下がり取材に応じたが、事件については語っていない。自らの説明責任について問われても、「刑事事件として捜査が始まっておりますので、このことについては私のほうから申し上げることは差し控えさせていただくのが適切」と繰り返し、こう述べた。

「捜査に支障を来してはならない。刑事事件の進捗、捜査への支障の有無を勘案して、適切な時期に説明させていただきたい、と考えております」

 河井氏への捜査はとうに終わっている。関係者の証人尋問はすでに終了している。4月9日には被告人質問も終わる。同氏が説明責任を果たすことで、司法のプロセスになんらかの影響を及ぼすおそれは、もはやまったくないといえる。説明する責任は、議員を辞職したからといって消えるものではない。

 とりわけ、明らかにすべきは自民党から受け取った1億5000万円と不正との関係だ。うち、1億2000万円は政党助成金、つまり国民の税金が原資である。

 案里陣営が選挙にかかった支出として報告したのは約2600万円にとどまる。全額を党から提供された金でまかなったとしても、なお1億2400万円ほどの使い道が不明だ。

 昨年1月23日発売の「週刊文春」(文藝春秋社)でこの金額が報じられた後、夫妻は受領の事実を認めつつ、「違法性はない」と主張。案里氏は「政治資金収支報告書にしっかりと記載し、報告することにしているので、違法性はないと考えている」と述べた。

 しかし、昨年11月に公開された克行氏の「自民党広島県第三選挙区支部」、案里氏の「党県参院選挙区第七支部」の政治資金収支報告書は、いずれも強制捜査で関係書類を押収された理由に、支出の総額や寄付などが「不明」となっていた。

 自民党から提供された金は、4月15日から6月27日にかけて、夫妻の支部口座に振り込まれた。一方、地元政治家などに金を渡す行為は、3月下旬から7月中旬まで行われている。

 買収は党からの入金がある前から始まっており、その資金の全額が政党助成金原資の金とはいえないだろう。それでも、一部が不正に流用された疑いはなお残るうえ、破格の金額が提供され、陣営の資金が潤沢になったことで、買収の対象や金額が増えた可能性もあるのではないか。

 克行氏は被告人質問で、買収資金は自身の「ポケットマネー」だと述べているが、それならば、その原資がきちんと説明できるのだろうか。加えて、1億5000万円の使途について、河井陣営はすべて明らかにできるのだろうか。

 こうした点について、たっぷりと時間をとって質問に答える機会を克行氏は設けるべきだ。