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午堂登紀雄「Drivin’ Your Life」

奨学金を批判する人への根本的疑問…底辺からでも這い上がれる素晴らしい救済制度だ

文=午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役
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底辺からでも這い上がれるのが日本の素晴らしさ

 当時の私の状況を少し紹介します。私は父親の反対を押し切り、東京の大学に進学しようと高校は普通科を選択しましたから、学費の支援も仕送りもないと言われていました。だからすべて自分で捻出しなければならず、奨学金を借りることは大前提でした。それで無利子の第一種奨学金を借りられたのですが、当然ながら卒業後は返済が始まるという説明は受けました。母親からは「利息がつかないからちょっとオトクよ」と言われ、当時は利息はなんのことやらという感じでしたが、安いなら良かろうという程度の認識でした。

 学生時代はちょうどバブルの頃で、バイトの時給も高いし先輩たちも2桁の数の内定をもらっていましたから、このままなんとかなるだろうと思っていました。しかし私が就職活動を始める直前にバブルが崩壊し、就職氷河期第1号になってしまったのです。私は結局どこにも就職が決まらず、卒業式を迎えます。

 卒業後はフリーターとして、居酒屋やビル清掃のアルバイトで細々と食いつなぎました。

 だから奨学金の返済が始まる通知が来たときも、とても払えないと育英会に電話し、返済猶予制度で返済開始を遅らせてもらいました。

 その半年後くらいにようやく就職が決まったものの、ミスばかりして約1年後にクビ同然で追われるように辞めました。その後はコンビニエンスストア本部、外資戦略系コンサルを経て独立起業し、今に至ります。

 という感じで、底辺から這い上がった経験があるがゆえに、私には生存者バイアス(自分の特殊な経験や価値感を一般化しすぎる)が強いのも自覚しています。

 しかし、奨学金を悪という人には、やはり次のような疑問が湧いてくるのです。

奨学金を悪く言う人への疑問

(1)奨学金は借金であり、卒業後には返済が始まるという説明を受けたのではないか?

 大学の職員として勤務する私の友人曰く、奨学金は借金で返済があるということはしっかり説明しているということです。つまり、奨学金を借りる学生は、奨学金の返済は織り込み済みで学生時代を過ごし、就職し、返済をスタートさせると思うのです。

(2)借り過ぎかもしれないという自制は働かなかったのか?

 私の場合、自宅外・文系だったので、月々の受給額は5万4000円ぐらいだったと思いますが、学費が高い医学部や理工学系はもっと借りられるようです。何かの記事で、総額500~600万円借りて返済が苦しい人の事例を読んだことがありますが、それくらいの額になれば、確かに厳しそうです。むろん、私のようにバイトしないと生活できないという場合、生活費も含めて奨学金を借りられるだけ借りるというケースもあるかもしれませんが、金銭感覚の乏しい学生であっても、さすがにそれはビビる金額のような気がします。

(3)借金してまで進学する以上、元を取るべく学生時代に努力をしなかったのか?

 お金を借りて進学するとは、かなり覚悟が必要なはずです。では、自分はそもそも何のために進学するのか? 進学して何をするのか? 私もそこまで明確ではなかったものの、講義のほとんどがつまらないと感じてからは、公認会計士を目指していわゆるダブルスクールにいそしみました。その費用も分割払いで、さらに借金が増えてしまったわけですが、お金を借りた以上は当然ながらそれ以上の人間になろうともがいていました。

 私が進学した当時、いまから約30年前は、大学に行くことが選択肢を広げる方法でした。しかし今、大卒がそこまで価値ある学歴なのでしょうか。ただ周囲が進学するから、なんとなく大学に行くのが当たり前だから、メディアが高卒と大卒では生涯年収が違うと煽るから、などという理由に流されて大学に進学しても得られるものは多くないでしょう。

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