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午堂登紀雄「Drivin’ Your Life」

奨学金を批判する人への根本的疑問…底辺からでも這い上がれる素晴らしい救済制度だ

文=午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役
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(4)奨学金の返済を加味した家計設計を考えなかったのか?

 たとえば東京での大卒初任給は、手取りで16~18万円くらいだと思いますが、スマホに月1万円以上使い、家賃が7~8万円もする部屋に住んでいる人がいます。そこに奨学金の返済が加われば、それはさすがに苦しいはず。だから本来は、収入に合わせて家計や生活構造を変えるはずです。自分の家計の収支すら見直せないとしたら、いったい大学で何を学んだのか。いくら勉強ができても、生活の知恵が回らないとしたら、なかなか大変だろうと思います。

 私が社会に出たての頃は携帯電話もスマホもありませんでしたが、いまなら格安SIMで月3000円程度でしょう。東京でも家賃3万円程度のアパートはたくさんあります。私も、駅から徒歩5分で家賃月5万5000円のアパートから、駅から徒歩20分で4万5000円のアパートに引っ越したのを覚えています。

(5)苦しいなら返済猶予制度を使わないのか?

 前述の通り奨学金には返済猶予制度がありますから、事情を説明すれば返済開始時期を遅らせてもらうことができます。私もそうしました。なのでもし家計が苦しいなら、その制度を利用すればよいのに、と思うのは自分だけでしょうか。

 奨学金の返済は、次の世代にバトンを渡すことだ、というのが私の考えです。先輩が苦労して返済した奨学金が、自分が進学する際の原資になっている。同時に自分が返済する奨学金が、次の世代が進学するための原資になる。しかし、もし今自分が苦しいからと、そのバトンを落としてしまったら、どうなるでしょうか。

 自分は先輩方のお金を使って進学していながら、世代間扶助のサイクルを自ら断ち切り、後輩が学ぶ機会を奪ってしまうかもしれないという身勝手さに、想像力を働かせたいと思います。

 という感じでちょっと辛辣な書き方になってしまいましたが、だからといって奨学金の返済ごときで、弱冠20代で人生に絶望しないでいただきたいと思います。なぜかというと、仮にいま25歳だとして、職業人生はあと40年もあるからです。20代はまだ周囲から教えてもらっている状態ですから、収入が低く生活が苦しくて当たり前。でもそれを乗り越え、30代、40代になり、仕事の実力がついてくれば、いくらでも挽回できます(と、私は希望を持つことを推奨しています)。

 時間軸を長く見据えて研鑽し、人生の後半戦を尻上がりで迎えられるほうが幸福度が高いということを、奨学金で進学した先輩からのお説教としたいと思います。

(文=午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役)

●午堂登紀雄

1971年、岡山県瀬戸内市牛窓町生まれ。

岡山県立岡山城東高等学校(第1期生)、中央大学経済学部国際経済学科卒。

米国公認会計士。

東京都内の会計事務所、コンビニエンスストアのミニストップ本部を経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして勤務。

2006年、不動産仲介を手掛ける株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。

2008年、ビジネスパーソンを対象に、「話す」声をつくるためのボイストレーニングスクール「ビジヴォ」を秋葉原に開校。2015年に株式会社エデュビジョンとして法人化。

不動産コンサルティングや教育関連事業などを手掛けつつ、個人投資家、ビジネス書作家、講演家としても活動している。

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