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藤和彦「日本と世界の先を読む」

WHO、コロナ報告書が骨抜き、中国の意向が色濃く…パンデミック対処能力の欠如が明白

文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー
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 さらにテドロス氏は、報告書が「最も可能性が低い仮説」と結論付けた「武漢ウイルス研究所からの漏洩」についても、「生データの提供が十分ではなく、さらなる調査が必要である」との認識を示し、米中の対立のはざまで苦しい舵取りをする苦悩をにじませた。

 米国では疾病対策センター(CDC)のレッドフィールド前所長が26日に公開されたCNNのインタビューで、「コロナの起源は武漢ウイルス研究所にある」との見方を示したように、「中国は今回のパンデミックについて責任をとるべきである」とする論調が強いが、ブリンケン国務長官は28日、「私たちにとっての課題は、将来のパンデミックを防ぐために、より強力なシステムを構築することに焦点を当てる必要がある」と述べ、前政権のアプローチとの違いを明らかにした。

国際的な枠組みの構築が必要

 ドイツ、フランスなど23カ国とEU、WHOは29日、「将来の新たなパンデミックに対応するための新しい国際条約を用意すべきである」と呼びかける共同寄稿文を発表した。寄稿文が要求する条約には「将来のパンデミックとなり得るウイルスを体内に保有している動物に対するサーベイの必要性」が盛り込まれている。米CDCは「今後発生が予測される新興感染症の4つのうち3つは動物由来であり、なかでもコウモリ由来のパンデミック発生には要注意である」との見方を示しているが、近年、中国南部や東南アジアの開発が進み、人とコウモリが接触しやすい環境となったことがその背景にある。

 コロナのパンデミックを契機に、WHOはアジア地域全体でコウモリの体内に存在するウイルスについて調査を行った結果、日本を含めアジア各地に生息するコウモリからコロナに類似する新種のウイルスが見つかっている。「コウモリの体内に存在するウイルスに関する基礎データを得ることにより、新たな感染症発生の可能性を予測できる」と主張する専門家もいる。

 前述の寄稿文には、日本や米国、中国、ロシアなどは加わっていないが、現在のWHOの権能では将来の脅威に対処できないことは明白である。パンデミックへの対処は、今や非伝統的な安全保障分野の最重要事項の一つになってきている。化学剤や放射性物質・核兵器の規制については、国際機関による査察の権限が認められているが、感染症対策を指揮するWHOはこの権限を有していないのである。

 EUは昨年11月、「感染症危機管理に関する強力なルールをつくるべき」と主張し、WHOはこれに賛成しているが、多くの国々は様子見の姿勢をとっているのが現状である。中国をはじめアジア地域が新たな感染症の発生源となる可能性が高いことから、日本も新たな国際的な枠組みの構築のために尽力すべきではないだろうか。

(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)

●藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

1984年 通商産業省入省

1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)

1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)

1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)

2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)

2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)

2016年 経済産業研究所上席研究員

2021年 現職

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