木下隆之「クルマ激辛定食」

BMW新型「M3」、驚愕のパワーエンジン…競技レベルの速さ+日常性、乗り心地も快適

BMW新型「M3コンペティション」

 BMWに新型「M3」が誕生した。エクステリアでの最大のトピックは、存在感が際立つ縦長のキドニーグリルを纏ったことだろう。すでに新型4シリーズでお披露目を終えているが、肯定する意見とネガティブ評価が侃侃諤々と飛び交う、話題の顔つきである。

 実は新型「M4」も同時にデビューしており、ほぼ共通のフロントマスクで、将来的には「M5」にもこの意匠が受け継がれる可能性がある。つまり、今後のMシリーズの「顔」となる可能性が高いのだ。

 搭載されるエンジンは、直列6気筒3リッターツインターボ。最高出力は510ps/6250rpm、最大トルク650Nm/2750-5500rpmに達する。怒涛のピークパワーが尋常ならざるレベルに達しているのは、想像の通りだ。

 実は、試乗車は日本に輸入されたばかりの新車であり、走行距離も数百kmにとどまる。鳴らし運転の最中であり、最高出力も抑えられていた。それでも激辛な速さには一点の曇りもない。510psほどになると、その次元での数馬力はサーキットでタイム計測でもしない限り、違いが現れない。そんな高いレベルに達しているのである。

 それが証拠に、今秋には4WDモデルが追加されるという。フロントに強力なパワーユニットを搭載し後輪を駆動させるという、M3が長年受け継いできたスタイルを改める必要がある。つまり、新開発のエンジンは、2輪だけでは受け止められないほど強力になってしまったというわけだろう。

 与えられたタイヤは、前輪275/35R19インチ、後輪285/30R20にも達する。前後異径サイズの極太タイヤをもってしても、そのパワーをトラクションに転嫁するには限界を迎えてしまったというわけである。

 ただし、FR駆動であっても持て余すことはない。出力特性は柔軟であり、低回転域からレスポンスが良い。市街地をゆるゆると走行しても、辛口スポーツモデルがそうであるようにギクシャクすることはない。乗り心地も、その速さを思えば許容範囲であり、快適なロングドライブもこなす。ドライブモードを「スポーツプラス」にセットすれば、そのままサーキットで最速タイムを叩き出すかのような速さを披露するにもかかわらず、「エコモード」や「コンフォートモード」にアジャストするだけで牙を隠す。

 運転支援技術も進化した。条件付きながらハンズフリーも許容するし、ウインカー操作だけでの車線変更もこなす。M3は硬派なスポーツセダンであり、これまではステアリングを握る者だけに喜びを提供していたが、より多くの快適性を手に入れた。

 エンジン特性は柔軟になり、乗り心地も整えられた。そして運転支援技術も備わる。ちなみに、東京都内から箱根を往復する約500kmの試乗での計測では、12.0km/lの燃費であった。世界屈指のスポーツセダンとしては驚くべき経済性である。

 それでいて、この新型M3の正式名称は「M3コンペティション」である。これまでのMシリーズにラインナップしている「コンペティションシリーズ」は、標準の「M」に比べてパワーを引き上げたり、足回りを強化したモデルのみに与えられていた称号である。それが新型からは、標準のM3はなくなり、すべてM3コンペティションとなったのだ。つまり、M3そのものが競技を視野に入れたマシンであることを意味する。それでいて日常性が備わったのだから恐ろしい。

(文=木下隆之/レーシングドライバー)

木下隆之/レーシングドライバー

プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

Instagram:@kinoshita_takayuki_

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