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ビジネスモデルは関係ない!? 危機を乗り越える会社に共通する特徴とは

新刊JP

――おっしゃる通り、組織変革について書かれた本を読むと、実話か理論のどちらかしか書かれていないことが多いように思います。実話だと、その会社の成長物語や困難に立ち向かった話を読んで盛り上がって、それでおしまいになりがちです。そして、理論だと、そこに新しいフレームワークが書かれていると、「とりあえずやってみよう」という意識になるけれど……。


松岡:そういうことはよく起きていますし、失敗してしまうんですよね。それはやはり自社のコア・コンピタンスを無視してしまったり、理念をしっかり振り返っていなかったりすることに起因します。


 もちろん、良いものはどんどん取り入れるべきですが、もっと大事なものがあるという視点が必要で、その例としてこの本の最初に、携帯電話販売会社が自社の強みを振り返らずに効率を優先した結果、顧客が離れていくというエピソードを書かせていただきました。


――まさに第1章のタイトルとなっている「なぜ、他社の成功事例を取り入れてもうまくいかないのか?」ですね。


松岡:そうです。また、理論や実話に寄っている本の内容の受け取り方としてまずいのは、他社で成功をしたから絶対に良いやり方だと考えてしまうことです。もちろん、その成功事例に罪はありませんし、実際にそのやり方で成功した会社もあるのは事実です。だから本になるわけですよね。


 でも、それがどんな会社にも共通する成功事例であるかどうかはわかりません。意図した結果にならないケースもありますし、逆に会社がおかしくなることすらあるのです。


――では、他社の事例を取り入れて成功するケースは「たまたま」であることが多いのでしょうか?


松岡:いえ、そういうわけでもありません。その他社の成功事例は、自社の企業理念を実現し、事業の中核的強みであるコア・コンピタンスを強化する方向に向かうのか、まさに自社に合うかという視点で見て、それに合わせる形で導入することができれば、成功の精度は高まります。

 

■危機を乗り越えて成長する強い企業が持っている共通点とは?


――本書の最もユニークな部分の一つは、松岡さんご自身の経歴が反映されている点だと思います。リクルート、ファーストリテイリング、ソフトバンクという3社を渡り歩き、ビジネスモデルも企業文化も全く違う中から、成長する企業の共通点を導いています。まずはこの3社のそれぞれの特徴を教えてください。


松岡:おっしゃる通り、ビジネスモデルも社風も全く違う3社でした。もちろん、そこに良し悪しはありません。それを前提にお話をしますと、私がいた頃のリクルートは個人の力の集合体のような会社でした。ベースに個人の自由がありました。これは当時社長だった江副浩正さんが「多くのリーダーシップ論では、1匹のライオンが100匹の羊を操る術が説かれているが、私はライオンになれないので、100匹のライオンを束ねる羊なろうと思った。そういうやり方があってもいいのではないか」というコンセプト通りです。


 次に勤めたファーストリテイリングは、首尾一貫して、いかに組織全体が機能的に動くかが大事な会社でした。その意味ではリクルートと全く逆ですね。でもそれはビジネスモデルとかみ合っていて、逆にそれが実現できなければ成長はないという状況でした。


 ソフトバンクは何をすべきかを決めるときに徹底的にブレインストーミングをするんです。そして決めたことは徹底してやり抜く力がある。つまり、他人の脳みそまで使って何をやるべきかを決断する力と、やり抜く力の両方があるということですね。PDCAのスピードも速くて、大企業では1、2週間かかることをソフトバンクでは1日、2日でやり遂げてしまう。それくらいの差がありましたね。

――松岡さんはリクルートからファーストリテイリングに移られていますが、社風もビジネスモデルも全く逆ですよね。個人として合う・合わないがはっきり出そうですが、松岡さんは大丈夫だったのですか?


松岡:それが後ほどお話しようと思っている共通点に通じてくるのですが、当時のファーストリテイリングはビジネスモデルを「製造小売り」に転換している時期で、伸び悩んでいたんです。ただ、経営トップの柳井正さんは、まず日本一、そして世界一になりたい、アパレルの世界を変えるのだと言っていました。私はその趣旨に賛同したので、どうやったらそれが実現できる企業文化になるのかを実践したくて、ファーストリテイリングに移りました。


 同じようにファーストリテイリングからソフトバンクに移ったときも、同じように経営トップの孫正義さんの趣旨に賛同して移りました。社風やビジネスモデルというよりは、企業として何を目指しているのかがしっかりしていたため、コミットメントできたと思います。


――ソフトバンクは孫正義さんをはじめとした経営層への絶対的な信頼がありそうです。


松岡:経営層への信頼というよりは、世の中に提供する価値を表す「社外規範」への共鳴というニュアンスが強いです。世の中を変えていく集団の中に自分も参画しているという感覚ですね。リクルートやファーストリテイリングでもそうでした。自分たちが世の中に影響を与えて、社会を変えているという実感を持つことができれば、気概もアドレナリンも出てきます。


――他に3社に共通する強さを生み出すポイントはありますか?


松岡:PDCAのサイクルのスピードが強烈に速いことですね。リクルートには「なぜそう思っているのにすぐ言わない、なぜやらないんだ。すぐにやれ」という文化がありますし、ユニクロは即断即決即実行を大事にしています。「52週のマーケティング」にしても、愚直に週末までの売上を月曜日の朝確認して、すぐに次の土日の売上のための手を打っていくという、PDCAのサイクルができていました。


 ソフトバンクも毎日のようにシミュレーションをして、ABテストなども日々重ねていく。それはウェブ関連だけでなく、営業電話の仕方ひとつ取ってもそう。どっちのやり方が響くのかデータを取って良い方法を選択していきます。


――PDCAのスピードは猛烈に速いけれど、それぞれ回す仕組みは違うのですか?


松岡:もちろん、違います。ビジネスモデルが違いますから。ただ、スピードが速いという共通点はあります。それというのも、自社に合った仕組みを取り入れているから、それが達成できるわけですよね。


――この3社にも危機はあったと思いますが、その乗り越え方にも共通点はあるのでしょうか?

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