『天国と地獄』の失態と『俺の家の話』のスゴさ…日本のテレビドラマが抱える弱点とは?の画像1
『テレビドラマクロニクル 1990→2020』(PLANETS/成馬零一)

 2021年冬クールのドラマの中でも話題となったのが、森下佳子脚本の『天国と地獄 ~サイコな2人~』だ。TBS系の日曜劇場で放送された本作は、綾瀬はるかが主演を務める刑事ドラマ。猟奇殺人事件の容疑者である創薬ベンチャー企業「コ・アース」社長・日高陽斗(高橋一生)を追う警視庁捜査一課の刑事・望月彩子(綾瀬はるか)は、日高とつかみ合いになって歩道橋の階段から転落する。その後、2人の心と身体は入れ替わってしまう(※詳細は以下記事を参照)。

綾瀬はるか&高橋一生の魅力を引き出す『天国と地獄』隙のないドラマに感じた“唯一の不満”

 森下は昨年の緊急事態宣言中に『転・コウ・生』(NHK)というドラマを手がけている。これは、役者が本人役を演じるドキュメンタリー性と、3人の人格が入れ替わってしまうというファンタジー性が入り混じったドラマだった。「入れ替わりモノ」というファンタジーをコロナ禍にぶつけることで、“何でも起こり得る不安定な世界”と化した現在の空気を表現していた。

 森下が『天国と地獄』で再度「人格入れ替わり」という題材を選んだのは、前作と同じ意図があってのことだろう。だとしたら、コロナ禍としての現実はもっとリアルに描くべきであった。これは森下の責任ではなく、彼女の脚本の意図を読み込めない(もしくは、ドラマだからとあえて無視した)演出やプロデューサーの失態だろう。

 こういった演出の不備は、残念ながらコロナ禍の現在を作中に取り込もうとした作品ほど露わになってしまう国内のテレビドラマが抱える弱点だ。

森下ドラマに通じる『青きヴァンパイアの悩み』

 たとえば、3月29日に最終回を迎えた『青きヴァンパイアの悩み』(TOKYO MX)は、コロナ禍の東京を舞台にしたファンタジーテイストの物語だ。一度も血を吸ったことのない2人の吸血鬼、黒澤蒼(桐山漣)と紫藤葵(ゆうたろう)は、コロナの影響でルーマニアにあるヴァンパイア協会本部から毎月送られてきていた血液配給が停止となってしまい、高騰した血液パックを購入するために、2人が営むバーとは別に、フードデリバリーサービスや家庭教師のアルバイトをすることになる。

 物語は2話で1エピソードのショートショートで、2人が毎回登場するゲストヒロインにからんだ事件に巻き込まれるというもの。劇中では「ニューノーマル」という言葉が繰り返し登場する社会風刺性の強いドラマとなっており、原作・脚本のアサダアツシの意気込みは伝わってくる。

 何より、コロナ禍の現実に“吸血鬼モノ”という虚構を被せるスタイルが森下佳子のアプローチにも通じるおもしろさがあるのだが、残念ながら本作もまた、マスクやソーシャルディスタンスに対する見せ方が不徹底であるため、最後まで作品世界に没入することができなかった。

『姉ちゃんの恋人』(フジテレビ系)を観たときにも同じことを思ったのだが、コロナ禍というフィクションにすることが難しい現在を、あえてテレビドラマの中で描こうとする作り手の高い志は買いたいのだが、現在進行形の現実だからこそ、少しの違いが目についてしまう。

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