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松岡久蔵「空気を読んでる場合じゃない」

兵庫県知事選、自民党“分裂”で混乱極める…20年君臨の井戸知事が不出馬

文=松岡久蔵/ジャーナリスト
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 金沢氏は本来なら前回の17年の知事選で禅譲されるはずでしたが、自分が本当に後継指名されるか不安だったため、公明党の有力県議と組んでクーデターまがいの政局を起こそうとした。これが井戸氏の逆鱗に触れ、出馬は不可能になりました。その後はとにかく『知事になれなきゃウソだ』と恨み節を吐く一方で、生殺与奪の権を握る井戸氏から反感を買わないようにすることだけを考えていたようです。

 その証拠に昨年から知事選出馬がいよいよ迫っているにもかかわらず、自分から率先して支援者に会ったりするなどの主体性はまったく見られなかった。井戸氏に怒られたのがトラウマとなっていたようなのですが、これでは周囲が担ごうという気をなくすのも無理はありません」

 金沢氏は10年間も兵庫県政のナンバー2の地位にいながら、ここまで支持基盤を固められていない時点で、そもそも知事の資格がないといわれても仕方があるまい。

対立候補は大阪財政課長出身

 一方の斎藤氏は兵庫県神戸市出身の43歳と若さが強みだ。総務省に02年に入省後、同省自治税務局都道府県税課理事官などを経て、18年4月から大阪府財政課長となった(選挙出馬にともない今年3月で総務省を退職)。大阪府財政課長だった際に、金沢氏以外の候補を探していた新会派の自民県議11人と面談し、兵庫県知事選に立候補することを決めたという。

 政治手腕は未知数なものの、井戸県政が20年もの間続き、「井戸の殿様ありき」で物事が進んできた結果、既存事業の無批判な踏襲など行政のたるみが起きていることを考えれば、新旧対決という構図は兵庫県民の注目を集めるのは間違いない。

井戸県政20年で県庁全体が「太鼓持ち化」、弊害の象徴「センチュリー」

 井戸県政20年については、「1995年に発生した阪神淡路大震災への対応などは余人に持って代えがたい偉業」(兵庫県の自民県議)と評価は高い。確かに東日本大震災と違って阪神大震災は「地方の災害」とみなされ、国からの支援をほとんど得られなかった。そのなかで県政を率いてきたのは容易なことではないのは事実だろう。

 ただ、「自治官僚出身で実務に通暁している井戸氏が20年も知事をやれば、県職員が意見することなど不可能。新しい意見を若手が上げても論破され、次第に新規提案する意欲すら県庁職員から失われていった」(先の県政関係者)のも確かだ。この結果として、「プロパー職員トップの荒木一総副知事を頂点に、能力以前に井戸氏の覚えのいい太鼓持ちの職員しか出世できない風通しの悪さがしみついた」(同)という。

 最近でも自らの公用車をトヨタの高級車ブランド「レクサス」から同社の最高級車「センチュリー」に変更したことについて、「乗ってみればわかる」と選民思想丸だしの発言で物議を醸したのは記憶に新しい。新型コロナウイルス感染拡大で県民の生活も苦しさを増すなかで、数百万円単位で予算を積み増すとは“さすが殿様は違う”としかいいようがない。このあたりの感覚のズレが20年もの長期政権の弊害を象徴している。

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17:30更新
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