木下隆之「クルマ激辛定食」

トヨタ「86」&スバル「BRZ」、2代目誕生の意義…パワーアップ&軽量化で加速力向上

トヨタ自動車「GR 86」とSUBARU「BRZ」

 トヨタ自動車の「86」とSUBARU(スバル)の「BRZ」が、フルモデルチェンジされて生まれ変わる。8年前、メーカーを跨ぐ希有なコラボレーションモデルとして誕生した「86/BRZ」は、2代目になった。

 ということは、つまりトヨタとスバルの共同開発は良縁だったことになる。それも道理で、トヨタ86は、この8年で20万台を販売した。特異なスポーツクーペがこれほどの台数を市場にデリバリーしたことは、成功と呼ぶに相応しい。

 異なるメーカーが共に得意とする技術を持ち寄り、一台のスポーツカーを開発するという新な業務資本提携は、“ステージ2”に移行。スバル伝家の宝刀「水平対向4気筒エンジン」に、トヨタが得意とする「直噴電子制御技術」が合体される。開発場所はトヨタであり、生産はスバルが担当。新な開発スタイルも、滞りなく機能したことを意味するのだ。

「86/BRZ」は数々のモータースポーツシーンでも活躍した。自動運転やEV(電気自動車)化の流れの中で果たした文化的な役割も見逃せない。

 新型「86/BRZ(トヨタ『86』は『GR86』と改名)」は、“キープコンセプト”である。軽量コンパクトなボディに水平対向4気筒エンジンを搭載し、後輪を駆動するそのスタイルに変更はない。ボディサイズも、ほぼ違いはない。重心を低く抑え、ショートホイールベース、ワイドトレッドのディメンションも踏襲される。絶対的な速さを追い求めるのではなく、走ることの爽快感が得られるのが特徴だ。

 ルーフやフェンダーに軽量なアルミ材を用い、マフラー等の軽量化も推し進めている。スポーツカーに欠かせない「軽さ」に、さらに磨きをかけているのだ。

 エンジンには大胆な施策が盛り込まれた。水平対向4気筒ユニットであることに違いはないが、排気量が2リッターから2.4リッターにスープアップされたのである。最高出力は207psから235psに、最大トルクは212Nmから250Nmに向上。より力強いパワーユニットとなった。

 スバルの資料によると、0-100km/h加速データは、7.4秒から6.3秒になった。現行型に関しては、たびたび動力性能の不足がささやかれており、筆者も加速力の弱さを指摘していた。それが改められたのだ。

「86/BRZ」には速さよりも運転する爽快感が期待されており、その意味ではターボチャージャーでパワー不足を補うのではなく、NAエンジンのまま排気量拡大で動力性能を得たことは、コンセプトに背かない。正常進化といえよう。

 スバルが得意とする運転支援技術アイサイトが投入されたのもニュースであろう。6速マニュアル仕様ではなく、電子制御技術との相性が良いATのみの組み合わせだが、安楽なドライブを得るためというより、衝突安全性能が高まることのメリットは心強い。

 発売は2021年秋頃とアナウンスされた。秋からはしばらく、「86/BRZ」祭りが続くだろう。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

木下隆之/レーシングドライバー

プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

Instagram:@kinoshita_takayuki_

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