NEW
高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

タリーズ、コメダのお膝元で名古屋めし発売の狙い…持ち帰りに注力、コッペパンでも大激戦

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

名古屋の喫茶店は「オトク」と「オマケ」も特徴

 日本のカフェ・喫茶店を生活文化の視点でも考察する筆者は、10代まで愛知県で暮らした。その経験も踏まえて感じるのが、名古屋(地域)の喫茶文化は「オトク」と「オマケ」も特徴なこと。「愛知モーニング」「名古屋モーニング」と呼ばれるモーニングサービスは、その代表例だ。朝の時間帯にドリンクを頼めば無料でつくトーストやゆで卵は、いまや全国的に有名となった。タリーズの「モーニングサービス」は何だろう。

 今度は広報担当の山口さほり氏(秘書室広報チーム チームリーダー)が、こう説明する。

「タリーズでは東海3県に限らず、朝の時間帯にモーニングセットを提供しています。また、新規開業やリニューアルした店のオープンなど、何かのイベントの際に先着限定で粗品を配るなどのサービスも行います。しかし、オマケ文化と真っ向勝負をしたいわけではなく、あくまでタリーズ流で考えています。朝の開店直後からパスタや温かいパンメニューを提供するのも、“モーニングサービス”といえるかもしれません」(同)

 名古屋市内で創業半世紀を超える、人気喫茶店の創業者(現会長)に話を聞いたことがある。昭和30年代の創業以来、名古屋にありながら「無料でつくモーニングは一切やったことがない」と断言した。「その代わり、朝の7時から自家焙煎したコーヒーを1杯ずつハンドドリップで淹れるのが、ウチのモーニングサービス」と語っていた。

競合が力を入れる「コッペパン」をどう育てるか

「北関東での地域限定から定番商品となったメニューとしては、『極厚ハムカツサンド』もあります」と話す柳生氏。今回の東海3県限定で期待する商品は何なのか。

「コッペパンですね。レトロブームでコッペパンの人気が高まっており、個人店以外に大手が運営する専門店も広がっています。具材の工夫もでき、魅力的な商品だと思います」(同)

 首都圏を中心にコッペパン店を展開する「パンの田島」という店は、ドトール日レスグループが運営する。コメダもコッペパンには力を入れる。もともと岩手県盛岡市の「福田パン」に代表される個人経営の店が人気だったが、近年は大手も熱い視線を注ぐ。

 筆者はコッペパン取材もしてきた。「大きく、惣菜系と甘いもの系と分けられ、パンの風味に加えて、具材次第でまったく違う味に変わるのが魅力」(パンの田島)だという。タリーズが、今後どう展開していくかも注目したい。

外出自粛で打撃を受けた「カフェ」に、お客が戻るのか

 経営の視点でいえば、コロナ禍での店舗休業や営業時間短縮の影響もあり、2020年度のタリーズコーヒージャパンの業績は厳しい見通しだ(同社の決算発表は5月以降)。1997年に日本1号店を開業以来、年々業績を拡大してきた同社には正念場となりそうだ。

 緊急事態宣言が解除された現在、カフェにお客が戻るのだろうか。

 筆者は戻ると考える。巣ごもり中の消費者にも話を聞いてきたが「気兼ねすることなく楽しく外食がしたい」という声が多い。店もお客も引き続き、コロナウイルスへの対策が必要だが、「手軽な価格で楽しめて」「自宅ではない雰囲気が味わえる」外食への渇望感があるのだ。

 そう考えると、喫茶メニューに対して目の肥えた東海3県の消費者が、タリーズの限定商品をどう評価するか。同社にとって「テストマーケティング」の場でもある。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

タリーズ、コメダのお膝元で名古屋めし発売の狙い…持ち帰りに注力、コッペパンでも大激戦の画像9
マーケティングを担当する柳生氏(右)と広報を担当する山口氏(左)

●高井 尚之(たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
 1962年生まれ。(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。 近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

情報提供はこちら

RANKING

5:30更新
  • 連載
  • ビジネス
  • 総合