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【プロ野球人・木村拓也の原点3】親友が見た巨人コーチ抜擢の理由…キャンプで驚きの行動

文=織田淳太郎/ノンフィクション作家
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 しかし、タクは絶対『きつい』とは言わない。目を輝かせて、『見ちょってください。やりますから!』と言うんです。ノックの打球を捕れず、『お前、グローブあるのか!』と怒鳴ったときも、自分の胸を叩いてこう言い返してきました。『ここにあります!』。あの子は、魂でプロ野球を生き抜いてきた男なんです」

引退後、すぐに巨人のコーチに抜擢された理由

 木村さんが巨人の1軍内野守備走塁コーチに就任した2010年、宮崎南高校でバッテリーを組んでいた佐々木未応さんは、都城泉ヶ丘高校の野球部監督を務めていた。

 同年2月、佐々木さんは同じ指導者として「プロのコーチが選手にどんなことを教えているのか」――それを学ぶために、巨人がキャンプを張る宮崎県営球場に足を運んだ。

 コーチ1年目の親友が、若手選手を相手にボールを転がしていた。それを選手が素手でとって、ネットスローする。この単純動作を何度も繰り返していた。

「拓也は高校時代から基本練習と皮膚感覚を大事にしてきました。バッティングや守備でも決して手袋を使わなかったんです。自分がやってきたその地味な練習を、今度は巨人の若手にコツコツと教えている。日が陰り始めると、ナインの何人かが室内練習場に移動し、拓也もそこに向かいました。僕はそろそろ帰るつもりでしたが、拓也の姿をもう少し目に焼き付けておきたい。ふとそう思って、覗きに行きました。驚いたことに、小笠原(道大)が特打をやっている横で、拓也がノックの居残り練習を一人黙々とやっているんです。僕は幼い頃から巨人のキャンプを見てきましたが、コーチが居残りでノック練習している姿なんか、一度も見たことがない。なぜ、あいつが引退してすぐに天下の巨人のコーチに抜擢されたのか、その理由がこのときはっきりわかりました」

 恩師の清水一成さんは、木村さんの存在をこう形容した。

「努力する才能」――。

 そして、宮崎南高のバックネット裏に翻る横断幕の「苔魂」の大きな2文字は、木村さん自身が自分の代名詞としてきた言葉だという。

「俺は岩にへばりついた苔だ」

【プロ野球人・木村拓也の原点3】親友が見た巨人コーチ抜擢の理由…キャンプで驚きの行動の画像2
宮崎南高校のグラウンドに掲げられた「苔魂」の2文字

 同校の正門近くの木陰にひっそりと佇む、甲子園初出場の記念石碑。そこに刻まれた碑文の凜とした力強さは、その「苔魂」に宿った木村拓也さんの、天からの檄のようにも聞こえる。

ぼくら
ひとりひとりは
強い
一本の青い
麦だった

【プロ野球人・木村拓也の原点3】親友が見た巨人コーチ抜擢の理由…キャンプで驚きの行動の画像3
宮崎南高校の甲子園初出場記念石碑

(文=織田淳太郎/ノンフィクション作家)

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