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松岡久蔵「空気を読んでる場合じゃない」~CAが危ない!ANAの正体(3)

ANA、CAの心身を蝕む“過度な容姿のキレイさ要求”…眼鏡着用NG、サービス要員扱い

文=松岡久蔵/ジャーナリスト
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 この管理職が特別に機転が利かないということも考えられるが、さすがに多くのCAが現地で困っていたため、現場では不満や別のホテル確保の要求は出ただろう。それでも宿泊予算の追加手配などができない時点で、十分な権限がないか、少なくとも権限を自分の判断で行使する管理職としての訓練がまったくなされていないことがわかる。

ごく一部の「名誉女性」以外の敗者はブラック労働のまま

 ANACA生え抜きの女性の取締役、執行役員のインタビューをみると、世間の華やかなCAのイメージそのものである。厳しい業務もきっちりとこなし、いつも笑顔。彼女たち個人の人生ということだけでいえば、非常に立派で、尊敬する。

 しかし、現場のCAの過酷な労働環境が長らく改善されていないところからみて、彼女たちは「ANAのブラック労働体質に染まっている上、仮に会社の方針に疑問を持っても改善する権限がない」といういびつな現実が垣間見える。

 また、ANAのような男性優位の企業の場合、こうした「名誉女性」的なモデル社員は、経営陣から“労働環境を改善する努力をしないでいい口実”として利用されているのが常だ。経営陣からすれば「CAは総合職よりも給料が安く労働環境も厳しいかもしれないが、こうして適応して頑張って結果を出している人もいる」と主張できるため、「文句を言うヤツは努力が足りない」といったような現場への責任転嫁を可能にする。

妊娠したら無給休職しか選べないという時代遅れの差別的感覚

 本来、経営とはごく⼀部のデキる社員を褒めそやすことではなく、ボリュームゾーンの社員が⼒を発揮できる環境を整えることだろう。社員の半数以上を占める⼥性 CAがたったの約6年半で辞めていく現状は、経営陣の怠惰以外の何物でもない。

 その怠惰の代表例が、妊娠したCAに対する制度である。なんと、すぐに会社に報告し無給休職を取得する選択肢しかないという。妊娠したから仕事をさせない、給料を払わないというのは、時代遅れを通り越して⾮⼈道的であり、労働基準法や男女雇用機会均等法に違反する可能性もある。米国など海外ではマタニティ⽤の制服で勤務可能な企業もあり、JALでは無給休職の他に地上勤務も選べるというから、ANAには現場の⼥性CAの⽬線が致命的に⽋如していることは明らかだ。

 筆者は多くの現役の20代CAから「こんなに⼦育てと仕事が両⽴できない職場だと未来が⾒えない」という絶望のこもった声を聞いたが、それも当然だろう。

ANAもJALも、CAを男女半々にする努力を

 これまでの取材の際、情報提供者に必ず「なぜこんな過酷な労働に堪え忍んでまでANAのCAを続けるんですか」と質問してきた。答えに共通しているのは「いろいろな人に会えて楽しい」「華やかで憧れだったから」といったものだ。憧れは現実とは違うものとはいえ、モチベーションはある以上、育児と両立できるなど制度設計やスケジュールの改善ができれば、状況はかなり変わるのではないかと感じている。

 さらに、現役のANAやJALのCAやOGに男性CAの増加について意見を求めたところ、

「荷物を上げるときに男手があると助かる」

「やはり男性が一人でも乗っていると、変な乗客がいても安心感がある」

「女だけの職場に特有な、細かすぎることや陰口などの悪い傾向が緩まる」

「女性はどうしても真面目になりがちなので、おおざっぱな男の人がいると考え方のバランスがよくなる」

などの声が聞かれ、男性CAの増加に肯定的だった。

 今回のジェンダーバランスの問題は給与面も含めて、JALも違いはほとんどない。保安体制をしっかり整える意味でも、男性中心主義の企業体質を改善する意味でも、ANAとJALはCAの男女比率を半々に近づける努力をすべきだろう。

(文=松岡久蔵/ジャーナリスト)

ANA、CAの心身を蝕む“過度な容姿のキレイさ要求”…眼鏡着用NG、サービス要員扱いの画像2●松岡 久蔵(まつおか きゅうぞう)

Kyuzo Matsuoka

ジャーナリスト

マスコミの経営問題や雇用、農林水産業など幅広い分野をカバー。特技は相撲の猫じゃらし。現代ビジネスや文春オンライン、東洋経済オンラインなどにも寄稿している。ツイッターアカウントは@kyuzo_matsuoka

ホームページはhttp://kyuzo-matsuoka.com/

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