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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

クラシックコンサート、ソリストがドタキャンしたらどうなる?観客が知らない壮絶な舞台裏

文=篠崎靖男/指揮者

 そんなソリストのドタキャンで起こるゴタゴタは、毎回ともなると困りますが、ほんのたまにだったら、僕自身はなんとなくアドレナリンが出て昂ってくるような気がします。慌てふためいて電話をかけまくっている事務局員や、急にプログラム変更となって混乱しているオーケストラの楽員の前では、こんなのんきなことは言っていられませんが、急に仕事が入ったソリストもなんとなく嬉しそうですし、コンサートを救ってくれたソリストを、オーケストラはとても良い雰囲気で迎えることになります。しかも、デビューしたての若いソリストならば、これは大きなチャンスとなります。

 往年の大オペラ歌手、イレアナ・コトルバスのサクセスストーリーは有名です。着々とキャリアを積み上げていたルーマニア人のソプラノ歌手コトルバスですが、当時はイギリスの郊外に住んでいました。

 ある時、イタリアの世界的オペラ劇場、スカラ座で演じられるプッチー二作『ラ・ボエーム』の主役を務める、大スターのミレッラ・フレーニが体調不良でキャンセルしたという連絡が入ります。自宅で電話を取ったのはご主人で、その頃コトルバスはロンドンでショッピング中。もちろん携帯電話などない時代ですが、なんとか連絡がつき、彼女はそのまま空港へ。イタリアへと飛びミラノ・スカラ座に着いたのは、なんと公演15分前という慌ただしさ。しかし、そこでの空前の大成功が彼女を世界的スターに押し上げたのです。

(文=篠崎靖男/指揮者)

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

 桐朋学園大学卒業。1993年ペドロッティ国際指揮者コンクール最高位。ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクールで第2位を受賞し、ヘルシンキ・フィルを指揮してヨーロッパにデビュー。 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後ロンドンに本拠を移し、ロンドン・フィル、BBCフィル、フランクフルト放送響、ボーンマス響、フィンランド放送響、スウェーデン放送響、ドイツ・マグデブルク・フィル、南アフリカ共和国のKZNフィル、ヨハネスブルグ・フィル、ケープタウン・フィルなど、日本国内はもとより各国の主要オーケストラを指揮。2007年から2014年7月に勇退するまで7年半、フィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者としてオーケストラの目覚しい発展を支え、2014年9月から2018年3月まで静岡響のミュージック・アドバイザーと常任指揮者を務めるなど、国内外で活躍を続けている。現在、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師(指揮専攻)として後進の指導に当たっている。エガミ・アートオフィス所属

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