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なぜ非上場の出版会社が「船井電機」へTOB?上場廃止の見通し…M&Aの新たな形態

文=編集部
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 一方、上田氏は1998年、青山学院大学国際政治経済学部を卒業。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。2008年、IT&経営コンサルティング会社ボールドグロウス(東京・千代田区)を設立して社長に就任。製造業の領域のサプライチェーンマネジメントや業務改善の最適化のコンサルティングを得意とするが、M&Aの実績も豊富。15年12月、買収したコンピュータビジネス書籍の出版社、秀和システムの会長兼社長になった。秀和システムが今回、TOBを実施する。

 TOBは船井哲雄氏の意思による。父親が精魂を傾けてつくった船井電機の経営を坂東氏と上田氏に託することを決断した。哲雄氏はTOBには応募せず、TOB成立後、買い付け価格918円の半値以下の403円で秀和グループに持ち株を譲渡する。関係者によると「経営を引き受けてくれた謝礼の意味が込められている」。

 今回のTOBの本質は、創業者の遺産である船井電機株の処理にある。株式の相続をめぐるお家騒動や相続した株式が外部に流れて乗っ取り劇に発展するケースは珍しくない。そうしたトラブルを耳にしてきた哲雄氏は、投資ファンドではなく、坂東、上田の両氏を見込んで船井電機を売り渡すことにした。M&Aの歴史のなかでも極めて珍しいケースである。

北米市場から日本市場に回帰したが浮上できず

 船井電機が飛躍するきっかけになったのは、1990年代に始めた米小売り大手ウォルマートとの提携だった。ウォルマートの全米に広がる店の店頭に船井電機製のテレビが並んだ。2008年にはオランダのフィリップスから北米テレビ事業を取得し、北米を重視する姿勢を鮮明にした。00年代後半には韓国サムスン電子に次ぐ、北米シェア4位まで成長した。しかし、北米で安定した収益を確保できたのは00年代まで。海信集団(ハイセンス)など中国勢の安値攻勢に見舞われた。コストをとことん抑え低価格の商品を供給することで知られた船井電機をもってしても、中国の大手に抗して収益を確保するのは難しくなった。

 創業者である船井哲良・取締役相談役(当時)は国内テレビ市場への回帰を決断した。北米向けの低価格のOEM(相手先ブランド)生産から国内向けの4Kなど高品質の自社ブランドで勝負するという経営方針に180度転換した。

 哲良氏はヤマダ電機の創業者、山田昇会長兼取締役会議長をビジネスパートナーに選んだ。ヤマダは17年から「FUNAI」ブランドのテレビを独占販売した。それでも業績は好転しなかった。最盛期の07年3月期には3967億円の売り上げがあったが、21年同期の連結売上高は前期比10%減の800億円、最終損益は21億円の赤字(20年同期は23億円の赤字)の見通し。年商はほぼ2割に激減した。赤字から脱却できず業績は水面下に沈んだままだ。哲良氏が17年に亡くなり、その後、明確な経営再建策を策定できぬまま、TOBを機に株式市場から退場することになるのか。

 再生を引き受けた坂東氏、上田氏に船井電機をよみがえらせる策があるのだろうか。テレビは構造不況業種の代表のようにいわれて久しい。

(文=編集部)

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