「低価格は、ロイホに求めていない」
かつて「ファミリーレストラン御三家」と呼ばれたブランドがあった。「デニーズ」「すかいらーく」「ロイヤルホスト」だ。これらは、まだ競合も限られた時代の同業界を牽引した。
それが「サイゼリヤ」に代表される低価格の店が拡大し、すかいらーくブランドの大半も低価格中心の「ガスト」に業態転換するなど、産業構図が変わった。そして現在のように総合型から専門型まで業態も多様化し、低価格帯から高価格帯まで店が林立した。
消費者意識はどうか。たとえば、新生銀行が発表した「2020年サラリーマンのお小遣い調査」では、1回の昼食代に使う額は「男性会社員の平均が585円、女性会社員が同581円」。ワンコインランチを裏づける数字だ。一方、「ロイヤルホストは割高」という声も聞く。
「そうした声があるのは承知しており、過去には低価格メニューで一部の商品を提供し、お客さまの反応を聞いたこともあります。その時にハッとしたのが、『ロイホにそれを求めていない』という声でした。お客さまの本音も受けて、食材へのこだわりやプロの調理人がひと手間かけるなどの原点を深めていき、低価格とは一線を画したのです」(吉田氏)
ファミリーレストランがファミレスと呼ばれ、身近な存在となった半面、敷居は下がった。
たとえば「ファミレス的な利用」といわれる「コメダ珈琲店」の郊外型店の入口はフラットで作業服姿でも入りやすい。一方、ロイホは階段を上がる店も多く、一定の敷居の高さがある。

ブランドは「銘柄」と訳されるが、筆者には「のれん」がしっくりくる。のれんをくぐるお客がブランドに期待するのは何か。「自宅では出せない味と雰囲気」だろう。「競合より割高でも、ロイホのステーキやカレーが好き」という会社員男女の声も聞いてきた。
「ロイヤルデリ」は、カフェのコーヒー豆の役割

「ロイヤルホストの原点は、1953年に福岡市で開業したフランス料理店『ロイヤル中洲本店』で、現在は『レストラン花の木』の名で運営されています。その飲食文化が、70年の大阪万国博覧会会場で運営したロイヤルキャフェテリアやステーキハウスなどを経て、ロイヤルホストに進化していきました」
城島氏はこう説明し、「創業事業の機内食で培った技術も横展開されています」と話す。
「ロイヤル中洲本店」は、大リーグ、ニューヨークヤンキースの大打者・ジョー・ディマジオ選手と女優のマリリン・モンロー夫妻(当時)が来店した名店だ。
また、業界に先駆けて1962年から始めたセントラルキッチンシステム(集中調理方式)で培った冷凍食品の技術は、「世界各国の料理を楽しめるフローズンミール」を掲げて、2019年12月から本格展開する冷食ブランド「ロイヤルデリ」にも結実した。