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【日米首脳会談】日本は「成功」報道、米国と温度差…急にウイグル問題が注目される裏側

文=深田萌絵/ITビジネスアナリスト

半導体不足は米中陣営を分ける

 そして、4月にワシントンD.C.で開かれた公聴会で、ジーナ・レイモンド米商務長官が世界で起こる半導体不足に関する報告を行っているが、ここでの発言には日米首脳会談において日本が米国に対して出したメッセージが反映されている。

 レイモンド商務長官は、米国は台湾と中国に半導体サプライチェーンに依存していることを前提に、「敵対勢力を通じて引き起こされた車載半導体不足は、国家安全保障上の問題」であるため、企業に対して「カウンターインテリジェンスとしての対応」を求めている。

 今年1月から表面化した半導体不足で、何度か米議会では台湾や台湾大手半導体製造TSMCを「中国」と認識しているというニュアンスで論じられてきたが、はっきりと台湾と中国をセットで名指ししたのは初めてのことである。米国政府が、台湾を中国側だと見方を変化させつつあるということだ。

 さらに商務長官は「仮に日本で地震があれば、我々は生産を移動できる」と言及したが、これは日本が中国についたと米政府に見られていることを示している。

 先の日米首脳会談での菅首相の中国を忖度した煮え切らない態度、半導体製造で米国が台湾からの自立を促しているにもかかわらず、逆へ向かう政策を進めていることが不興を買い、日本が中国側についても問題ない半導体サプライチェーンを構築しているということだ。

米戦略とサムスンの奇策

 菅政権が「米国が喜んで台湾TSMCを誘致している」「日米首脳会談が成功した」と誤認しているのは、官僚のフェイク報告書、大手メディアのフェイクニュース、SNSの論調を生み出す「コグニティブ・ウォー」に嵌まっているためだ。

 米政府の真意は、TSMCが米国工場を稼働させようがさせまいが、どちらに転んでも米国が勝てるゲームを仕掛けている。そのカギとなったのが、最先端チップ製造に強いサムスンと輸出規制という2つの武器だ。

 TSMCかサムスンの米最先端工場が稼働し始めたら、日本とオランダに最先端製造装置を台湾に売らないよう輸出規制を課し、台湾という中国への抜け穴を防ぐ。そうすることで、最先端チップは米国と韓国サムスンのみで、中国の技術的優位性を制御可能となる。

 次に中国が打ってくる手は、習近平国家主席が、韓国・文政権を通じて韓国サムスンを抑えることである。

 ところが、文政権と対立関係にあるサムスンは、中国進出で現地中国共産党幹部と懇意にしており、中共を通じて北朝鮮経由で文政権に影響を与えるという奇策を打つ準備を固めている。

 世界の半導体を支配すれば、250兆円規模のエレクトロニクス市場と400兆円規模の自動車市場を支配することができる。その利権に向けて、世界各国の半導体企業は政治力を使って「コグニティブ・ウォー」という奇策を繰り出している。

 菅政権の誤認識で、日本は経済戦争における敗色が濃厚となった。
(文=深田萌絵/ITビジネスアナリスト)

【日米首脳会談】日本は「成功」報道、米国と温度差…急にウイグル問題が注目される裏側の画像2深田萌絵(ふかだもえ)
ITビジネスアナリスト
早稲田大学政治経済学部卒 学生時代に株アイドルの傍らファンドでインターン、リサーチハウスでジュニア・アナリストとして調査の仕事に従事。外資系証券会社を経て、現在IT企業を経営。

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