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「東芝が非上場」ではなぜダメなのか?「有名企業なら上場すべき」の価値観の歴史を考える

文=菊地浩之
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2014年8月に都内で開催された「JOC25周年記念の集い」にて挨拶をする、当時80歳の堤義明(写真:アフロスポーツ)

西武グループオーナー、堤義明は「西武鉄道が上場しなければならない理由がわからない」と釈明

 かつて、そのことを冷静に考え、それを発言した御仁がおられた。西武グループの総帥・堤義明だ。

 世間では、西武グループを西武鉄道を中心とする鉄道グループだとみているかもしれないが、オーナー・堤家から見ると、西武グループは(西武鉄道の親会社だった)国土計画を中心とするデベロッパー事業者だ。かつて、東京郊外を開発したときに買収したのが西武鉄道で、堤家にとって鉄道事業は特に思い入れのある事業ではない。

 そして、堤家は西武グループを閉鎖的に所有・支配することを最重要事項に置いている。

 ところが、何かの案件で多額の融資を受ける際に、その条件として西武鉄道を上場したらしい。思い入れがないとはいえ、事業の一部である。堤家は株式の名義を虚偽記載して80%以上の株式を保有したまま、西武鉄道を上場した。

 当時はコンプライアンスなんかない時代だったから、それでも異論は出なかったのだろう。しかし、2004年に監査役がそれに気づいて「これはヤバい」と発表。これに対し、堤義明は記者会⾒で「私には西武鉄道が上場しなければならない理由がわからない」と釈明した。

 堤家の論理からいうと、この釈明は誤っていない。でもそう思っているなら、問題が起こる前に非上場にしておくべきだった。当然、義明の会見を聞いた関係者は激怒。東京証券取引所は西武鉄道を上場廃止にした。みずから非上場に「する」のと「される」のとでは大違い。西武鉄道の株式の資産価値は暴落し、それによって親会社の国土計画の資産価値も毀損。銀行管理を受けることになり、西武グループは解体され、堤義明は経営者失格の烙印を押されて身を隠す羽目になった。

 世間が「上場は善、非上場は悪」と感じているうちは、東芝の対応もやむを得ないといったところだろうか。

(文=菊地浩之)

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●菊地浩之(きくち・ひろゆき)
1963年、北海道札幌市に生まれる。小学6年生の時に「系図マニア」となり、勉強そっちのけで系図に没頭。1982年に國學院大學経済学部に進学、歴史系サークルに入り浸る。1986年に同大同学部を卒業、ソフトウェア会社に入社。2005年、『企業集団の形成と解体』で國學院大學から経済学博士号を授与される。著者に、『日本の15大財閥 現代企業のルーツをひもとく』(平凡社新書、2009年)、『三井・三菱・住友・芙蓉・三和・一勧 日本の六大企業集団』(角川選書、2017年)、『織田家臣団の系図』(角川新書、2019年)など多数。

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