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現役眼科医に聞くブルーライトカット眼鏡の“本当の有用性”…医療団体が抱く憂慮と危機感

文=編集部
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日本眼科学会などが連名で「小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見」との声明を発表。小児の装用は近視を進行させるリスクが高まり、ブルーライトそのものの害よりも近視リスクのほうが大きくなってしまう可能性があると警鐘を鳴らし、波紋を広げることとなった。(画像は日本弱視斜視学会公式サイトより)

「スマートフォンが発するブルーライトが失明させることはない」との米学会による声明

 ブルーライトが及ぼす目への影響については、世界的に知られる英学術誌「ネイチャー」を出版するネイチャー・リサーチ社によって展開されているオンライン学術誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された岐阜薬科大学(岐阜県)の研究グループによる論文が知られている。

 2014年6月に同誌に掲載されたこの論文は、マウスの視細胞に青、白、緑の3色のLEDを用いて光を照射したところ、ブルーライトを含む青と白のLEDを照射した視細胞には障害が起き、ブルーライトが含まれない緑のLEDでは障害が見られなかったという内容。

 また同誌は2018年7月にも、目の網膜に存在するレチナール物質が、ブルーライトが長時間照射されることによって毒性変化を起こし、光受容細胞を攻撃してしまうというトレド大学(米国オハイオ州)の研究グループによる論文を掲載。

 こうしたなかで、目に対するブルーライトのネガティブな影響が世界的に取り沙汰されることとなった。

 しかし、後者の論文が発表された翌月の2018年8月には、米国眼科学会(American Academy of Ophthalmology)が「No, Blue Light From Your Smartphone Is Not Blinding You」(いいえ、スマートフォンが発するブルーライトが失明させることはない)との声明を公開。

 このなかでは、トレド大学による上記論文の著者のひとりに、この研究はデジタル端末が発したブルーライトによって失明することがあることを示すのかを尋ねたところ、「あり得ない」との回答を得たことを紹介。そもそも論文内で示された現象は人体を含む自然界ではまず起こらないとし、ブルーライトが及ぼす影響について過剰に反応すべきではないと結論づけてみせたのだ。

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米国眼科学会が2018年8月に出した声明「No, Blue Light From Your Smartphone Is Not Blinding You」(画像は同学会公式サイトより)

日本眼科学会など6団体が今回の声明を出すに至った背景にある憂慮と危機感

 こうした経緯を見ても、医学界の見解としては、「PCなどから発せられるブルーライトや自然界におけるそれが、人間の目に大きな悪影響を及ぼすとはいえない」というのが大勢のようだ。

「日本眼科学会など眼科系の医療団体が今回のように6団体共同でこうした一般向けの声明を出すなどというのは、かなりレアなことです。それだけ、小児へのブルーライトカット眼鏡装用を推奨する流れについて危惧していたということでしょう。ブルーライトカット眼鏡は小児に対してはほとんど効果のないものであり、むしろ小児の視力発育に悪影響を及ぼす可能性さえある。にもかかわらず、小児に対して有用だともいう科学的根拠のない誤った見解が広まるのを防止したいという強い意志のあらわれと考えてよいでしょうね」(前出の眼科開業医)

 冒頭で述べた6団体共同の声明にもある通り、PCなどデジタル端末の画面から出るブルーライトは、自然光に含まれるブルーライトよりもはるかに少量なのだという。網膜に障害を与えることはまずないというそうした微量のブルーライトを過剰に恐れ、その対策として、特に小児へはリスクとさえなりかねないブルーライトカット眼鏡の装用が眼鏡量販店のプロモーションによって日本で一般化していくことに対し、眼科医療にかかわる各団体が大きな憂慮と危機感を以前より抱いていた、ということのようだ。

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