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松岡久蔵「空気を読んでる場合じゃない」~CAが危ない!ANAの正体(9)

ANA、CAの私的なSNS投稿を監視…管理職3人が密室で5時間説教、同期と食事だけで

松岡久蔵/ジャーナリスト
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 今回の一連の「お仕置き」の重要な点は、彼女たちのSNS投稿はANAのブランドを棄損するような内容の書き込みはしていない上、身内にしか見れないような非公開設定をしていたということである。それを会社側は前回の連載でご紹介した、「不適切な」SNS投稿の密告窓口である「SNSオフィサー」へのタレコミを利用して把握し、投稿したCAを尋問するという人権無視の所業を行っているのだから、時代錯誤も甚だしい。

 情報提供してくれた現役CAの一人は「管理職の40~50代の世代には、SNSが何気なく投稿するもので理由など特にないということが理解できない」と世代間の認識のズレを指摘する。ただ、ANAの管理職CAはSNS投稿すべてを「会社に対する反逆行為」ととらえているようで、異常でしかない。それに、部下に「他言するな」「パワハラではない」などと確認させる時点で、自分がパワハラをしていると自覚がある証拠である。

「あいつも密告して同じ目に遭えばいい」と思う自分が怖い

 前回と今回でANAのSNSに対する異常なまでの監視体制について書いてきたが、もっとも深刻なのは、出世や憂さ晴らしのために同僚を会社に売るという「密告文化」が根付いてしまっていることである。先の情報提供者のCAはこう話す。

「今回は私たちが密告されて被害に遭ったわけですけど、同期同士での会食なんて、外出自粛の今なら誰でもやっていることだし、SNSに投稿している人だっていくらでもいるはずです。なんで私たちだけ、ここまで酷い目に遭って晒しものにされないといけないのか、悔しい。だから、同期や同僚の投稿が目に入ってくるたびに、『あれもこれも違反じゃん。密告して同じ目に遭わせてやればいい』と考える自分がいるんです。でも、はっと我に返ると、これは本当に恐ろしくてぞっとします。私たちを通報したCAもそういうネガティブな思いに駆られて密告したのかもしれません」

 ANAには経営側に現場の声を反映させられるような労働組合は残念ながら存在しない。筆者の前回記事を読んで初めて同様の被害に遭った同僚がいたことを知ったCAもいたくらいで、身内でのやりとりすら警戒しなければならない。そのため、仮に今回ご紹介したような「お仕置き」の被害に遭った場合でも、親しい同期などに愚痴をこぼすことはできても、組織の問題として立ち向かうことは限りなく難しい。

 また、「お仕置き」をした管理職CAにしても、お気の毒である。自分より20歳ほども年下の若手をいびることが「仕事」なのだから、もはやまともな社会人とはいえない。筆者は下請けいじめをしてきた大手メーカーの社員を取材したことがあるが、死んだ魚のような眼をしていた。相手を人間として見ないようにしなければ、続けられないのだという。その管理職CAも、もしかしたら同じ眼をしているのかもしれない。

 筆者はANAのSNS監視体制は立派な「表現の自由」の侵害であり、ハラスメントの最たるものだと考える。即刻、廃止すべきではないだろうか。

(文=松岡久蔵/ジャーナリスト)

ANA、社員のSNSを監視、グループ内の投稿も…愚痴でも社員呼び出し、数時間も説教の画像2●松岡 久蔵(まつおか きゅうぞう)

Kyuzo Matsuoka

ジャーナリスト

マスコミの経営問題や雇用、農林水産業など幅広い分野をカバー。特技は相撲の猫じゃらし。現代ビジネスや文春オンライン、東洋経済オンラインなどにも寄稿している。ツイッターアカウントは@kyuzo_matsuoka

ホームページはhttp://kyuzo-matsuoka.com/

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