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鴻海、なぜ米国「1兆円」工場建設を頓挫させたのか?米中の間で強かな“天秤外交”

文=編集部
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“米中貿易戦争”のはざまで天秤外交

 鴻海の創業者、郭氏は米中貿易戦争のはざまでビジネスを展開してきた。米大統領選があった2016年、鴻海が傘下に収めたシャープとともに、中国・広州市に液晶パネル工場を建設し、1兆円を投資する計画を表明。トランプ氏が米大統領に就任すると米国でもトランプ政権の意向にも沿ったかたちで1兆円規模の液晶パネル工場の建設計画を打ち出した。

 さらに、2018年、中国・珠海市に1兆円規模の大規模な半導体工場を新設することが明らかになった。中国はハイテク産業育成策「中国製造2025」で半導体の国産化を強力に進めており、鴻海は中国の国策に協力する。米国はハイテク覇権を狙う中国の同政策を問題視しており、新たな火種となった。

 郭氏自身は経営者から政治家へと転身を図る。2020年、台湾総統選で大富豪の郭氏は有力候補に躍り出た。郭氏は鴻海が大規模な生産拠点を置く中国と太いパイプを持つ。総統になれば、親中的政策に傾斜していくとの見方もあり、米中貿易摩擦をめぐるパワーバランスを崩す影響力を持つ可能性が指摘された。親中派の頭目とみなされ、結局、立候補断念に追い込まれた。台湾総統選では対中強硬路線をとる民進党の蔡英文氏が再選を果たした。

 郭氏は米中の対立のはざまでビジネスチャンスをうかがう天秤外交を進めたが、トランプ氏が敗北後、米国からそっぽを向かれ、挫折した。

次に目指すのはベトナム

 鴻海の2020年12月期決算は売上高が前期比0.3%増の5兆3580億台湾ドル(約20.6兆円)と過去最高だった。一方、純利益は12%減の1017億台湾ドル(約3900億円)と4年連続で減った。

 売り上げの約5割を米アップルに依存し、アップル製品の販売動向が業績を大きく左右する構図だ。iPhoneの受託生産に代表される電子機器の受託製造サービス(EMS)だけでは、どうしても収益が上げづらいという構造的な問題が出ていた。主力の工場を置く中国では人件費の高騰が続いている。

 そこで、中国以外での生産体制を強化しており、なかでもベトナムに重点的に投資している。共同通信社のグループ会社でアジアの経済情報を配信しているNNA(21年3月12日付)はこう報じた。

<鴻海精密工業グループ全体のベトナム事業の年間売上高が向こう3~5年で400億米ドル(約4兆3400億円)に到達する見通しだ。2020年の売上高の7倍近くとなる。ベトナムメディアによると、鴻海グループの同国事業の20年売上高は前年比2倍の60億米ドル。21年は100億米ドルを超える見通しだ>

 1兆円工場計画が頓挫し、米国に見切りをつけた鴻海はベトナムに活路を求めているようである。

(文=編集部)

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