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“鉄道系YouTuber”として人気の「スーツ」が、過去に投稿した動画に映り込んでいるという人物から、動画の削除を求められていると明かした。
スーツによると、ある女性から、1年ほど前に公開した動画に関して、「私が他の男性と不倫している姿が写っているので削除してください。削除しない限り弁護士に相談をして法的手段を取ります」とのメールが送られてきたという。
普段、視聴者からのメールには返信しないというスーツだが、この女性にとっては重大なことなのだろうと推察し、次のように返信。
「法的手段を試みても構いませんが、映り込みまでは肖像権の保護の対象となっておりませんので、おそらく意味をなさないと思います。写り込んでいる時間をお知らせいただけましたらぼかしを入れるか、該当箇所をカットできます。それがし難いようでしたら、弊社宛に15万円お振込み頂ければ、削除いたしますがいかがでしょうか」
このメールの意図について、該当箇所を教えてもらえれば、ぼかしを入れたりカットするなど編集できるが、女性が自分の姿をスーツに特定されたくないかもしれないので、動画で得られるであろうおおよその収益として、15万円を補償してもらえれば削除するとの対応策を提示したという。
だが、これに対して「15万円の根拠となるものを教えて下さい。新聞記者や報道機関はもとより弁護士にこのことを全て報告済みです。お金でたかるとは如何なものかと、良心の欠如です」との返信があったため、スーツは面倒になり、これ以降は放置しているという。
スーツは、映像の主体ではなく、背景として映り込んだ程度では著作権侵害にはならないはずと主張、それでも、駅構内で撮影する際は、鉄道会社などにクレームが入らないようにするため、一般人の顔などにはできる限りモザイク処理をしていると説明している。
実際のところ、有名YouTuberやテレビ番組などで自身の姿が望まないかたちで映り込んでしまった場合、肖像権の侵害となるのだろうか。山岸純法律事務所の山岸純弁護士は次のように解説する。
「一般論としては、観光地や公道、その他人がよく集まる場所で撮影した写真・動画に、たまたま『背景に人物が映っていた』という程度では、肖像権侵害になりません。しかし、その写真・動画が、その映った人に着目していたり、通常『撮影されない、撮影されたくないような場所(自宅内など)』なら、盗撮などの犯罪のほかにも、(民事上の)肖像権侵害が成立することとなります。
これを法律的に難しく言うならば、『社会生活上、受忍すべき限度を超えてその人の肖像が撮影されている場合に肖像権侵害が成立する』となります。
ただし、実際に『映った』ことで、どのような損害が発生するかというと、正直なところあまり想定できません。あえて想定するならば、『たまたま背景として映り込んだだけ』なのに、撮影者やテレビやマスコミがその『映り込んだ人(肖像)』自体を面白おかしく取り上げ、またはネットでも複製されて拡散されたような場合に、そのテレビなどで取り上げたマスコミや拡散した人に対して損害賠償ができる、という程度です」
不倫している現場が有名YouTuberの動画に映り、パニックになってしまったのかもしれないが、高圧的な態度によってスーツの怒りを買ってしまい、動画を削除してもらうのはかえって難しくなってしまったようだ。
(文=編集部、協力=山岸純/山岸純法律事務所・弁護士)
時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。現在、神谷町にオフィスを構え、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。