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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

本当のことを知ると意外と怖いオペラの名曲たち…絶対に結婚式で歌ってはいけない曲も

文=篠崎靖男/指揮者
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 カラフは謎を解くのですが、トゥーランドットは「結婚するのは嫌だ嫌だ」と、これまで何十人も若い王子の首をはねてきたにもかかわらず、駄々をこね始めます。そこでカラフは、「僕は彼女の愛が欲しい。そこで、僕も謎を出す。これまでに自分は名乗っていないが、明日までに僕の名前がわかれば結婚しなくてもいいし、僕は死んでいい」と言うのです。純真な王子なんですね。ところが、この純真さが多くの人々に迷惑どころか、死の恐怖を与えることになります。

 冷酷なトゥーランドットは北京の街の住民に、「今夜は誰も寝てはならぬ。求婚者の名を解き明かすことができなかったら住民は皆死刑とする」などと、無茶なお達しを出したのです。カラフもここまでするとは思ってもみなかったでしょうが、当時の中国は皇室が絶大な権力を持っていたため、本当に皆殺しになってしまいます。もちろん作り話ですが、北京住民は誰も寝ることができずに大騒ぎ。そんな様子を眺めながらカラフが歌うアリアが、『誰も寝てはならぬ』です。

 ところで、そんな残酷な女性と、なぜ結婚したいなんて考えるのでしょうか。よほど美しかったのかもしれませんが、僕なら結婚後を想像して逃げ出すでしょう。

結婚式で歌ってはいけないオペラの名曲

 有名なオペラのなかには、その内容を離れ、単独で有名になったアリアが結構あります。

 同じくプッチーニ作曲のオペラ『蝶々夫人』は、日本が開国した当時、長崎に駐在していた悪いアメリカ人が、純粋な若い日本人の娘と偽装結婚する物語です。作品中の『ある晴れた日に』は、何も知らない日本人の現地妻が、アメリカへ帰国した夫から捨てられたことを信じず、彼を待ち続けながら純情に歌うアリアです。

 また、プッチーニのオペラ『トスカ』の名曲『歌に生き、恋に生き』は、主役の歌手役トスカの素晴らしい生きざまを歌っているのかと思いきや、実際は「歌に生き、恋に生きてきただけなのに、どうしてこんな目に遭わないといけないのか」と嘆く内容です。絶対に結婚式で歌ってはいけません。

 イタリア2大オペラ作曲家のもうひとりであるヴェルディのオペラ『椿姫』の有名すぎるデュエット曲『乾杯の歌』も、実はハッピーな歌ではありません。

 花のパリで毎晩のように催されていた社交パーティで、若い男女が楽しく乾杯をしながら歌う曲ですが、女性は高級売春婦です。彼女は一緒に『乾杯の歌』を歌う若き青年貴族と恋に落ちますが、結婚など許されるわけはなく無理やり引き離されてしまい、彼女は貧困の中、結核に侵されて死んでしまうという結末です。まだ2人が一番ハッピーだったころに歌う曲なのでいいのかもしれませんが、結末を知ってしまうと、やはり結婚式では歌うのはどうかと思ってしまいます。

 そういえば、オペラ歌手の友人たちがいたら、結婚式で歌ってくれるモーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』の有名なデュエット曲『お手をどうぞ』も、考えてみると、女性をかどわかそうとしているプレイボーイと、婚約者がいるにもかかわらずついて行ってしまう女性のストーリーです。

 昨年、結婚式を挙げることができなかったカップルも多くいると聞きます。今年の“ジューンブライド”がどうなるのかはわかりませんが、クラシックの名曲にはお気を付けください。
(文=篠崎靖男/指揮者)

本当のことを知ると意外と怖いオペラの名曲たち…絶対に結婚式で歌ってはいけない曲もの画像2

●篠﨑靖男
 桐朋学園大学卒業。1993年アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクールで最高位を受賞。その後ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクール第2位受賞。
 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後、英ロンドンに本拠を移してヨーロッパを中心に活躍。ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、BBCフィルハーモニック、ボーンマス交響楽団、フランクフルト放送交響楽団、フィンランド放送交響楽団、スウェーデン放送交響楽団など、各国の主要オーケストラを指揮。
 2007年にフィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者に就任。7年半にわたり意欲的な活動でオーケストラの目覚ましい発展に尽力し、2014年7月に勇退。
 国内でも主要なオーケストラに登場。なかでも2014年9月よりミュージック・アドバイザー、2015年9月から常任指揮者を務めた静岡交響楽団では、2018年3月に退任するまで正統的なスタイルとダイナミックな指揮で観客を魅了、「新しい静響」の発展に大きな足跡を残した。
 現在は、日本はもちろん、世界中で活躍している。ジャパン・アーツ所属
オフィシャル・ホームページ http://www.yasuoshinozaki.com/

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