NEW

「水素をエネルギーの中心にするのは困難」バラ色シナリオを砕く厳しい現実と課題

文=横山渉/ジャーナリスト

「再エネの主力電源化は方針として決まっている。電気は、使う電気とつくる電気を常に同じにする同時同量が必須だが、不安定な再エネが増えると電気の需給ギャップが拡大する。現在の再エネくらいなら火力だけで調整できるが、再エネ比率が50%になると、ギャップを調整する新しい仕組みが必要で、その役割を担うのが水素・アンモニア発電だ。水素利用の促進は昔からいわれてきたことだが、真剣に議論すればするほど、技術的課題の大きさが浮き彫りになった。そこで、水素よりも扱いが容易なアンモニアが浮上してきた。水素だけだと高コストで効率が悪いので、水素とアンモニアを合わせて10%になった」

 確かに、水素だけで賄えるならアンモニアは出てこないはずだ。水素は非常に軽いガスなので、製造後に気体のまま貯蔵するには、かなり大きなタンクが必要になる。圧縮して低温で液化して輸送するにも特殊加工の金属タンクが必要だ。小さな着火エネルギーで燃えるため、輸送の際の振動による熱上昇でも爆発する危険性があるからだ。

 一方、化学合成されたアンモニアは現在、大半が肥料の原料として使用されているが、アンモニアは水素分子を含む物質であり、輸送技術の確立しているアンモニアの形に変換して輸送し、利用する場所で水素に戻すという手法もある。そして、アンモニアは燃焼してもCO2を排出しないカーボンフリーな物質なので、現在の石炭火力発電に混ぜて燃やす(混焼)ことでも、CO2の排出量を抑えることが可能だ。アンモニア20%混焼はすでに実験済みであり、すでに実用化へ動いている。アンモニア100%を燃料として使用する「専焼」も検討されている。

 同アナリストは「水素エネルギーは確実に普及する」と前置きしつつも、いわゆるバラ色の水素社会到来には懐疑的だ。

「水素をエネルギーの中心にするのは難しい。水素を発生させたところから近隣をパイプラインで結ぶのは比較的簡単だが、大量貯蔵・輸送には不向きだ。工場のような産業用や業務用の熱源に向いている。地産地消型のエネルギーといえる」

分散型エネルギーで防災を

 次世代のエネルギーを考えるとき、コストや安全性を中心に考えがちだが、地震や自然災害が多発する日本では、分散型の電力システムに変えていくことが必要だ。大手電力の火力や原子力の大規模集中型電力システムの脆弱性は、東日本大震災のような大地震ばかりでなく、近年の台風や大雨による停電で明らかになっている。

 19年9月の台風15号は千葉県を中心に甚大な被害を与えた。このとき停電した最大軒数は93万軒以上で、復旧に2週間かかったところもあった。しかし、千葉県の睦沢町は地元産の天然ガスや太陽光で発電し、大手電力から独立した独自の送電網で供給する地域新電力が停電時も電力を供給した。これは町が出資する地域新電力「CHIBAむつざわエナジー」によるマイクログリッドによるもので、複数の発電設備、蓄電設備などから自営線を使って電力を供給する分散型のエネルギーシステムだ。

RANKING

17:30更新
  • ジャーナリズム
  • ビジネス
  • 総合