NEW

「水素をエネルギーの中心にするのは困難」バラ色シナリオを砕く厳しい現実と課題

文=横山渉/ジャーナリスト

 北海道鹿追町では、乳牛など家畜のふん尿を原料にして水素をつくる取り組み「しかおい水素ファーム」という実証事業が進んでいる。敷地内に精製設備や製造装置を新設し、バイオガスから分離膜でメタンガスを精製し、水蒸気と反応させ水素を発生させている。昨年4月からは30キロ以上離れた「おびひろ動物園」(帯広市)の電力源として水素を供給する方法を検証している。18年に胆振東部地震で停電を経験した地元住民には「地元でつくる水素を使いたい」という声もあり、エネルギーの地産地消につながった。

 政府の地震調査委員会は、今後30年以内に震度6弱以上の激しい揺れに襲われる確率などを毎年推計しているが、3月末の発表によれば、千島海溝や南海トラフなど、とくに海溝型の巨大地震が予測される地域で70%以上の高い確率となっている。地産地消のエネルギー源として水素の本格利用が望まれる。

今はまだ利益が出ない水素事業

 水素・アンモニアには株式市場も注目しており、水素は「国策テーマ銘柄」になっている。グローバルにはずいぶん前から「ESG投資(環境、社会、企業統治)」の考え方が主流になっているが、日本でも今回の政府方針を受けて、カーボンニュートラルに挑戦することが、投資家からの評価を考える上で重要になっていくだろう。証券会社のアナリストはこう話す。

「ノウハウはあっても実用化はこれからという水素・アンモニア関連銘柄は慎重な評価が必要。そこに大きく投資するのは、まだ難しい。燃料電池車でいえば、自動車が先か水素ステーションが先か、鶏と卵の関係になっており、水素ステーション1カ所当たり少なくとも700台以上の車が日常的に補給しに来ないとペイしないといわれる。発電ではアンモニア20%混焼が直近では実現の可能性が高いが、100%の専焼となると国がかなりテコ入れしないと難しい。国内の火力発電所すべてで20%混焼すれば、世界で流通している2000万トンをすべて輸入しなければならないぐらい量としては不足している」

 現在、水素銘柄の中核は岩谷産業だが、岩谷の水素事業を支える技術や部品を供給している会社も注目されているという。水素を圧縮して保存する技術、精製するフィルター、バルブ、水素脆化を防ぐコーティング技術など、中小型株でも水素関連銘柄はたくさんある。

 ただ、水素関連ビジネスのマーケットが現在のサイズでは岩谷が注目されるが、将来的にマーケットが大きくなれば、商社や製鉄、パワープラントを手掛ける企業の存在感が必ず大きくなってくるという。

 将来への期待感でにわかに活気を帯びてきた水素・アンモニア銘柄。50年を目標とした脱炭素社会への取り組みは国際的な約束でもあり、機運が萎むことはないだろう。株式市場は政府の動きを先取りするだけに、注目が必要だ。

(文=横山渉/ジャーナリスト)

情報提供はこちら

RANKING

17:30更新
  • ジャーナリズム
  • ビジネス
  • 総合