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小谷寿美子「薬に殺されないために」

下痢や便秘時の「整腸剤」の要注意な話…納豆菌・沈降炭酸カルシウムの配合を確認

文=小谷寿美子/薬剤師
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「Getty Images」より

整腸剤は安全ではない

 下痢でも便秘でも、お腹の調子が悪い時に必ずといっていいほどお世話になるのが整腸剤です。整腸剤は「生きて腸に届く乳酸菌」を薬として利用したものです。乳酸菌があることによって腸内の悪玉菌たちの住処を奪い、それらの影響を抑えます。さらに、乳酸菌の力で腸内のpH(水素イオン濃度)を酸性にして、悪玉菌たちを殺菌していくことができます。薬以外でも、乳酸菌を使った食品は数多くありますし、「トクホ」としても数多くの食品があります。お腹にいいものとして私たちの生活の一部となっています。

 このことからも、私たちの認識としては「整腸剤=乳酸菌=良いもの」なのです。処方箋で出される薬のほとんどは「整腸剤=乳酸菌」であることが多いです。しかし、市販薬は残念ながらさまざまな成分が配合されていることから、決して安全ではなく注意が必要です。そのことに気づいたのは、私が薬局チェーン入社1年目でやらかした事件があったからなのです。

整腸剤なのに禁忌がある

 入社1年目の時に、禁忌の整腸剤を販売したことがあります。絶対に使ってはいけない人に薬を渡してしまったということです。当時の私は、会社から指定された「推奨品」を販売しなくてはならない立場にいました。その推奨品のなかに、胃酸に負けずに大腸に確実に届く薬がありました。一般的な乳酸菌は、生きて腸に届くのは一部で、ほとんどが胃酸で死んでしまうという特徴があります。しかし、推奨品の薬は胃酸で死なないという特徴があり、より効果を期待することができました。

 その一つが「ラクボン」という乳酸菌を使った薬です。殻をかぶった乳酸菌が、胃酸がある環境では閉じこもって寝ているのですが、大腸に到達すると眠りから覚めて殻から出てきます。こうした“殻をかぶった菌”として有名なのが「細菌兵器」です。殻をかぶって眠っていた細菌が、ひとたび私たちの体内に入ると、殻を破り動きが活発化するというものです。こうして人間を細菌感染をさせて殺すというもので、現在はそういう悪い菌は使用が禁止されています。その一方で、薬として有効利用されている菌もあります。

 もう一つ、腸で溶けるようにコーティングされている乳酸菌の薬がありました。こうしたコーティングは便秘薬の「コーラック」にも施されています。整腸剤でもコーティングされた薬品がありましたが、現在は発売が中止されています。コーティングの成分は酸性では溶けず、中性~アルカリ性になると溶けます。胃の中は胃酸があるので酸性、腸に入るとその酸を戻すためにアルカリ性の腸液が分泌されます。当時の薬にはアルミニウムを使ったコーティング剤が配合されていました。

 アルミニウムは何も持病がない人にとっては影響がないのですが、透析をしていて日常的に排泄できない人はアルミニウムをため込んでしまうため、「アルミニウム脳症」を発症する危険があります。そのため、絶対に使ってはいけません。それを知らず、胃酸に溶けず大腸に確実に届く薬だからいいものだと思って、この薬を販売してしまったのです。

 後日、家族の方から激怒され返品され、健康被害はなかったのが幸いでした。もちろん、これ以降、私は市販薬について猛勉強したのでした。

現在の薬で気を付けるべきは、納豆菌と沈降炭酸カルシウム

 納豆菌も実は殻をかぶった菌ですが、胃の中では眠っていて、腸に届くと目覚めて活動をします。納豆菌は腸に住み着いている善玉菌を増やす効果があります。そして、悪玉菌の居場所を奪い減らしていく効果があります。他にも納豆菌には、テレビや雑誌で取り上げられているような良い効果がたくさんあります。

 さらに、納豆菌はビタミンKを作る効果があることがポイントです。ビタミンKには骨タンパク質を高める効果があり、骨粗しょう症の予防として利用されています。そして、血液凝固因子をつくるのに必要な成分です。この血液凝固因子があるからこそ、私たちはけがをした時でもしっかり出血を止めることができるのです。

「ワーファリン」という薬は、ビタミンKの働きを抑えることで、血液凝固因子をつくらずに血栓ができるのを予防する効果があります。つまり、納豆菌があるとワーファリンの効果を打ち消してしまうのです。「整腸剤=乳酸菌=良いもの」と思い込んでいると、この納豆菌配合の整腸剤の存在に気づけないので注意が必要です。

 次に気を付けるべき成分は「沈降炭酸カルシウム」です。これは制酸剤といわれる成分で、胃酸を抑えて胃の状態を良くする効果があります。さらに、乳酸菌たちを胃酸から守る効果あります。しかし、甲状腺ホルモンの薬である「チラーヂン」は沈降炭酸カルシウムがあると吸収が悪くなります。甲状腺の機能が悪く、薬でこのホルモンを補充しなくてはならない人にとっては、沈降炭酸カルシウムが配合されている整腸剤をうっかり飲んでしまうと、期待する効果が得られません。

 そうした成分をうっかり取らないためにも、見分けるポイントがあります。納豆菌と沈降炭酸カルシウムは、「医薬品」の整腸剤に配合されているということです。「指定医薬部外品」の整腸剤を買えば、こうした成分が入っていないので安全です。納豆菌は他の薬の影響はあるものの、何も飲んでいない人にとっては腸や骨、その他の器官にとっても良い効果があるので、飲んでおいたほうがいい成分です。

(文=小谷寿美子/薬剤師)

小谷寿美子/薬剤師、NRサプリメントアドバイザー

小谷寿美子/薬剤師、NRサプリメントアドバイザー

薬剤師。NRサプリメントアドバイザー。薬局界のセカンドオピニオン。明治薬科大学を505人いる学生のなか5位で卒業。薬剤師国家試験を240点中224点という高得点で合格した。
市販薬も調剤も取り扱う、地域密着型の薬局チェーンに入社。社歴は10年以上。
入社1年目にして、市販薬販売コンクールで1位。管理薬剤師として配属された店舗では半年で売り上げを2倍に上げた実績がある。

市販薬、調剤のみならずサプリメントにも詳しい。薬やサプリメントの効かない飲み方、あぶない自己判断に日々、心を痛め、正しい薬の飲み方、飲み合わせを啓蒙中。

Twitter:@kotanisumiko

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