NEW

富士フイルム、退任の古森会長、燻る「1年で復帰」説…「ゼロックス」を失った代償

文=編集部

 富士フイルムは18年1月、米ゼロックスの買収を発表し一体運営による収益向上を狙った。だが、「物言う株主」として知られるカール・アイカーン氏らがこれに反対。アイカーン氏が推薦する経営陣を受け入れた米ゼロックスは富士フイルムとの売買契約を破棄した。富士フイルムは損害賠償を求める訴訟を起こし、買収交渉は2年近く膠着状態に陥った。

 富士フイルムは、富士ゼロックス(持ち株比率75%)を使って、米ゼロックスを「現金支出ゼロ」で買収しようとしたが、これにカール・アイカーン氏らがかみついたのだ。古森氏が買収発表の記者会見で「ゼロ円買収」を打ち出したのが、そもそも失敗だった。「買収するなら自腹を切れ」というわけだ。

 19年11月、富士フイルムHDは、米ゼロックスとの合弁会社、富士ゼロックスの米ゼロックスの持ち分(25%)を2500億円で買い取った。これで富士フイルムの100%子会社となった。57年間に及ぶ合弁事業は解消した。市場が成熟しているとはいえ、事務機部門は富士フイルムの営業利益の4割を稼ぐドル箱である。

 ゼロックスブランドの使用契約は21年3月末で終了した。4月からゼロックスブランドは使えなくなり、社名を富士フイルムビジネスイノベーション(BI)に変更した。永年親しまれてきたブランドを失うことが致命傷になることを古森氏が知らないわけがない。

 米ゼロックスの買収失敗の代償は小さくなかった。新中計の最終年度の24年3月期の連結売上高(2.7兆円)は08年3月期の2.8兆円に及ばない。米ゼロックスとの資本関係の解消に伴い、ゼロックスブランドは使えなくなる。BIの社長には真茅久則取締役(62)が昇格。二代続けて富士フイルム出身者がトップを務める。富士フイルムHDの次期社長と二人三脚でBIの事業転換を主導する。

 富士フイルムの複合機の世界シェアは9%。リコーやキヤノンなどに次いで第5位だ。英語圏ではコピーすることをゼロックスすると言う。ゼロックスの知名度は高く、100億円のブランド使用料以上の有形無形のメリットがあったはずだ。永年親しまれてきたブランドを失うことが致命傷になることもあり得る。

 米ゼロックスへの製品供給はどうなるのか。現在は富士フイルムの工場で生産した複合機をゼロックスに供給しているが、24年にOEM契約の更新期を迎える。20年3月期の海外売上高(仕向地ベース)は米州が18%(4200億円)、欧州が13%(2900億円)。合計で7100億円に達する。当然、米ゼロックスへのOEM供給分が含まれる。同期のドキュメント事業の売上高は9700億円だった。ゼロックスが調達先を他のメーカーに切り替えれば、工場の稼働率はガタ落ちになる。

 自社ブランドで欧米に進出するといっても、無名のブランドで参入するには高い壁がある。事務機器は成熟した市場になっており、ブランド力が物を言う。脱ゼロックスは大きな試練である。古森氏は退任会見で「気力、知力は衰えていない」と語っていた。「社名を変更したBIの業績が急降下して古森最高顧問がCEOに復帰する」(外資系証券会社のアナリスト)と予想する向きもある。脱ゼロックスに失敗すれば、「独自のブランドになった複合機事業を成長軌道に戻す」という名目で、1年後にドンが経営陣に返り咲くかもしれないのだ。

(文=編集部)

Business Journal

企業・業界・経済・IT・社会・政治・マネー・ヘルスライフ・キャリア・エンタメなど、さまざまな情報を独自の切り口で発信するニュースサイト

Twitter: @biz_journal

Facebook: @biz.journal.cyzo

ニュースサイト「Business Journal」

情報提供はこちら

RANKING

5:30更新
  • 企業・業界
  • ビジネス
  • 総合