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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

日本以外の先進国、早くも景気過熱&金利上昇の懸念…日本経済、警戒が必要なモード入り

文=加谷珪一/経済評論家
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 しかも、日本を除く先進各国ではワクチン接種が順調に進んでいることから、世界はコロナ後を見据えた先行投資競争に邁進しており、資材価格も急騰している状況だ。

 つまり、コロナ危機によって経済のデジタル化が急ピッチで進み、ワクチン接種によって景気回復の目処が立ったことから、景気過熱すら指摘されるようになってきた。景気の過熱要因はそれだけではない。新しく政権の座についたバイデン米大統領は、矢継ぎ早に超大型の財政出動を表明しており、その規模は総額で約420兆円という途方もない額に膨れあがっている。

 予算は議会が決定するため、全額が執行されるのかは分からないが、前代未聞の財政出動が実施されるのはほぼ間違いない。バイデン政権は財源を確保するため法人増税や富裕層向けの所得増税などを行う方針だが、財源の多くは国債増発となるので、増税による消費低迷よりも財政出動効果のほうが圧倒的に大きいだろう。

 整理すると、コロナ危機をきっかけに、次世代の成長エンジンとなるデジタル化投資が前倒しで行われ、ワクチン接種が進んだことから、コロナ後を見据えた資材の争奪戦がスタート。さらには米政府が前代未聞となる巨額の財政出動を計画している。景気を後押しする材料がここまで出揃うことは珍しく、市場において景気過熱を懸念する声が出てくるのは、当然の結果といってよいだろう。

市場ではインフレ懸念が台頭中

 景気が過熱するとインフレが予想されるので、債券市場はそれを見越して金利の上昇が始まっているというのが一般的な解釈である。同時に財政出動の財源の多くが国債であることから、財政悪化を警戒する動きも混じっている。景気拡大と財政懸念の両方が混在した形で、金利上昇が進んでいると見てよいだろう。

 もし米国の景気が順調に回復すれば、賃金や物価も相応に上がり、いわゆる良いインフレになる可能性もある。だが需要過多で物不足が続いた場合には、予想外にインフレが進む可能性があることは否定できない。そうなってくると、注目を集めるのが金融当局のスタンスである。

 今のところFRBは目立った動きを見せておらず、パウエル議長も正常化について「まだ議論する時期ではない」と市場を牽制する発言を行っている。足元のインフレ懸念の上昇だけで正常化を急ぐことはないだろうが、予想外に金利が上昇した場合には話は違ってくる。

 現在1.6%程度の金利が1%台後半となり、2%を突破するような状況となれば、FRBも何らかの対応を行わざるを得なくなる。5月12日の株式市場では、4月の消費者物価指数が予想外の伸びだったことから、金利上昇が警戒され売り一色となった。一方で、債券市場は買いが旺盛であり、金利はむしろ下がっている。実際に株式と債券を現物で行き来する投資家は少ないが、見かけ上は株の売却で得られた資金が債券に回った格好であり、株と債券のダブル安にはなっていない。

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