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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

日本以外の先進国、早くも景気過熱&金利上昇の懸念…日本経済、警戒が必要なモード入り

文=加谷珪一/経済評論家
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 しかしながら市場にインフレ懸念が存在しているのは間違いなく、何かをきっかけにそれが債券売りにつながる可能性については警戒が必要だろう。

金利上昇の影響をもっとも受けるのは日本

 米国の場合、経済に十分な基礎体力があり、巨額の財政出動による効果も期待できるので、仮に金利を引き上げても軟着陸を模索できる。一方、不用意に金利が上がった時に極めて制御が難しくなるのが日本である。

 2021年3月末時点における日銀の国債保有額は530兆円を突破している。量的緩和策で供給されたマネーはほとんどが日銀当座預金にブタ積みされており、市中には出回っていない。だが金利が上がれば銀行は収益を犠牲することはできないので、当座預金を引き出す可能性が高く、巨額のマネーがいよいよ市中に流出する(これを防ぐため日銀が巨額の利子を付与すれば莫大な国民負担が生じる)。

 日本はワクチン接種で致命的に出遅れており、景気回復の見通しも立っていないことから、10年物国債の金利は0.1%弱で安定推移している。日銀としては量的緩和策を継続する以外に選択肢はなく、日本において今、出口戦略を議論しても鬼が笑うだけだろう。だが、市場というのは時に制御できない力を持つものであり、グローバルで金利上昇が顕著となれば日本市場だけが無風というわけにはいかなくなる。

 実際、米国の金利が急上昇した2021年3月には、一時的ではあるが、日本の長期金利が0.15%に急騰し、一部の投資家を震撼させた。その後、再び金利は低位安定しているが、3月の動きは市場が持つパワーを垣間見せたとも言える。

 日本が金利への警戒感を持つ必要がない理由が、ワクチン接種の遅れというのは何とも情けない話だが、当面の間は、日本の金融政策に変更はないだろう。だが、グローバル市場はコロナ後を見据えて急ピッチで変化している。気がついた時にはすでに金利上昇が止まらなくなっているという可能性もゼロではない。相応の警戒が必要なモードに入ったと考えるべきだろう。

(文=加谷珪一/経済評論家)

●加谷珪一/経済評論家

1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『教養として身につけたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)、『中国経済の属国ニッポン、マスコミが言わない隣国の支配戦略』(幻冬舎新書)などがある。

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