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ビジネスジャーナル・ANA批判連載14回目

ANA、過度な「国際線拡大」路線が“逆回転”し苦境…打倒JALに邁進した30年の歴史

文=松岡久蔵/ジャーナリスト
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 ANAにとっての好機は、99年の航空会社グループ「航空連合(スターアライアンス)」に日系航空会社として初めて加盟したことだった。これは近い関係にあった米ユナイテッド航空が創設メンバーだったことが大きく寄与した。ANAは自前の国際線網が弱かったため、多くの海外航空会社と共同運航が実現可能なアライアンスへの加盟は魅力的だった。

 その頃のJALは自前主義がまだ強く、共同運航についても各国のフラッグキャリアを中心に個別提携に基づいて実施するものがほとんどであった。「この頃までのANAは国際線拡⼤という企業戦略の中で⾃社のポジショニングをわきまえていた」(航空アナリスト)。

2000年代は羽田の国際化などが段階的に進展

 ただ、2000年代に入ると、01年の米国同時多発テロ、03年のイラク戦争、重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行など、不測の事態によって旅客需要は激減したが、人件費など緊急コスト削減策を実⾏することで、04年度には17年連続で赤字だった国際線で初の黒字化を達成した。

 ⼀⽅で、成⽥空港のB滑⾛路の供⽤開始や、02年の⽇韓サッカーワールドカップの共同開催をきっかけとして⽻⽥空港の国際化が段階的に進んだこと、⽶国系航空会社の経営難によりアライアンスを通じた共同運航を⼀層推進する流れが強まったことが追い⾵となり、国際線の枠が増加した。

 ANAは前述のように共同運航を重視していたこともあり、この流れに⾒事に乗った。成田からアジア各地への新規路線を開設し、既存路線についても増便などで体制強化を図った。これらの便には共同運航先であるユナイテッド航空の便名も付与した。米国でのユナイテッド航空の販売力は強大であり、ユナイテッドが獲得してきた北米―アジア間の顧客を成田でトランジットさせることで、自社が運航する共同運航便の席を埋めることができる。

 ANAとしては新規開設路線の収益ベースを確保できるし、ユナイテッドとしてもサービスレベルを落とすことなく、収益性に難のあった以遠権路線をカットできるという点で双方にとって有益な取り組みであった。

2010年のJALの経営破綻と羽田の国際線増枠で野望に邁進

 国際線拡大という大方針を順調に推し進めているかに見えたANAだが、「目の上のたんこぶ」のJALが依然として成田の発着枠を多く占め、特に長距離路線ではプレゼンスで大いに水をあけられる状況に変わりはなかった。それを一気に変えたのが、10年のJALの経営破綻と羽田の国際線発着枠増枠である。

松岡久蔵/ジャーナリスト

松岡久蔵/ジャーナリスト

Kyuzo Matsuoka


ジャーナリスト


記者クラブ問題や防衛、航空、自動車などを幅広くカバー。特技は相撲の猫じゃらし。現代ビジネスや⽂春オンライン、東洋経済オンラインなどにも寄稿している。


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Twitter:@kyuzo_matsuoka

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