NEW

「地方とコロナ」の現実…感染の疑いで村八分、自殺した感染者が受けた嫌がらせの中身とは

文=織田淳太郎/ノンフィクション作家
【この記事のキーワード】, , , ,

 この田舎町のコロナ疑惑騒動が沈静化したのは、住民が中国人夫妻の「身の潔白」を認め、謝罪したからではない。実は、地域に正真正銘のコロナ感染者が出たことに起因する。

「今度は、そちらのほうに敵意と警戒が集中したんです」と、前出の男性は続ける。

「ここから出て行け!」玄関に貼り紙

「あるご家庭ですが、ご主人は都心に単身で赴任していました。そのご主人が、体調が悪いと休みを取って帰郷してきたんです。で、しばらくして地元の病院で検査をしたところ、コロナに感染していることがわかった。この田舎にとってはほとんど第1号感染者ですから、何時何分の電車の何両目に乗って帰ってきたか、地元ではどこに買い物に行ったか、どの店に入ったかなど、それこそ事細かく行動を調べられた。そのことが、住民にアッという間に広がっちゃったんですね。

 ご主人は地元の大手スーパーに入っていましたが、以来、そのスーパーはお客さんが極端に減り、閑散としてしまいました。住民はもう1軒の別の小さなスーパーで買い物をするようになったものの、あるとき、そのスーパーの従業員が窓や床を丁寧に拭いたんです。それを見た住民が、今度は『このスーパーにも感染者が来たに違いない。それで消毒しているんだ』と騒ぎ立て、それが噂として広がった挙げ句、そのスーパーにもお客さんが寄りつかなくなった。単なる掃除だったんですがね。もちろん全員じゃないですが、田舎の人ほど、こうしたことに過敏になるのかもしれません」

 しかし、気の毒なのは、その感染した男性である。自宅の玄関には「ここから出て行け!」「これ以上、迷惑をかけるな」などの嫌がらせの紙が、毎日のように貼られたという。

 近隣住民に敵視される追い詰められた暮らしのなか、その一家はやがて住み慣れた街を離れ、別の地域に引っ越していった。

「それからしばらく経って、そのご主人が自死したという知らせが届きました。コロナ感染でまるで犯罪者扱いされて、精神的に相当まいっていたんでしょう。気の毒としか言いようがありません」

田舎暮らしの対処術とは

 老子の「道徳経」にもあるように、物事には陰と陽の2つの対極的な側面がある。「愛」の背後には「憎」が潜み、「善」の裏には「悪」が隠れ、「平和」も「戦争」に支えられている。

RANKING

23:30更新
  • ヘルス・ライフ
  • ビジネス
  • 総合