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喫煙が最大のリスクに?専門医に聞く難病「加齢黄斑変性」の注意点&対処法とは

文=真島加代/清談社
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「gettyimages」より

 人間の目は、ものの大きさや色、奥行きなど、さまざまな情報を得るために必要な感覚器官だ。しかし、近年、加齢とともに視界が欠けていき、治療しなければ失明に至る病「加齢黄斑変性」を発症する人が増えているという。誰しも発症する可能性がある加齢黄斑変性について、専門医に話を聞いた。

喫煙が最大のリスクに

「私たちは、目の中にある『網膜』に光が当たることで、ものを見ることができます。この網膜の中心にあるのが『黄斑(おうはん)』という部位です。黄斑は光が直接当たるのでダメージを受けやすいのですが、通常はすぐに損傷を修復することができます。しかし、この修復メカニズムがさまざまな要因で崩れると、加齢黄斑変性(以下、黄斑変性)になってしまうのです」

 そう話すのは、眼科専門医の平松類氏。黄斑変性を発症すると、目の奥に新たに血管(新生血管)が生えて形状を変えたり、その新生血管が破れて出血したりと、さまざまな症状が現れるという。

「“ものを見る中心”にある黄斑の形が変わり、視界の“ゆがみ”を感じるのが主な症状です。なかには視界の一部が黒く欠けてしまう人もおり、そのまま放置しておくと、いずれ失明してしまいます」(平松氏)

 なんと、欧米では中途失明の原因として、この黄斑変性が1位になっているという。日本でも患者数が増えており、現在は日本人の中途失明原因の4位になっている。

「以前は日本人の発症例は少なかったのですが、この数年は増加傾向にあり、今後も増えるといわれています。原因のひとつは『食の欧米化』です。特に、ファストフードなどの高カロリー、高脂肪の食べ物は血流を悪くして、黄斑の修復サイクルを崩してしまうのです」(同)

 血流と黄斑変性の発症には深いかかわりがある、と平松氏。そのため、もっとも注意が必要なのは「タバコを吸っている人」だという。

「タバコは血流を悪くして黄斑をむくませたり出血しやすくしたりと、黄斑に悪影響を与えます。タバコを吸う人は吸わない人に比べて2~3倍、黄斑変性になりやすいといわれているので、タバコは最大のリスクといっても過言ではありません」(同)

 そして、もうひとつの原因は“高齢化”だ。実は、50代以降の中高年は黄斑変性を発症しやすいことがわかっているという。

「加齢によって黄斑が受けた光のダメージを修復する力が衰えるため、ダメージが大きくなっていくことが原因です。また、50歳を超えるとスマートフォンやパソコンから発するブルーライト(青色光)の影響もより強く受けるようになるので、黄斑変性の原因になります」(同)

 黄斑変性は加齢やタバコ、食生活などの生活習慣と直結している。聞き慣れない名前だが、とても身近な疾患なのだ。

早期発見につながるセルフチェック法

 失明にもつながる黄斑変性は早期発見・早期治療が重要となる。早めの発見を助けるのが「アムスラー検査」というセルフチェック法だ。

「アムスラー検査とは、縦線と横線が張り巡らされた格子状のものを片目ずつ見る方法です。格子状のものを見て『どこがゆがんでいるのか』『極端に見えにくい部位はないか』を判断することができます」(同)

 見え方に違和感がある場合は、黄斑変性だけでなく「黄斑浮腫」や「黄斑円孔」など、ほかの疾患を発症している可能性もあるという。また、若年世代も油断できない黄斑の疾患がある、と平松氏。

「強い近視が原因で発症する『近視性黄斑変性』は、年齢に関係なく黄斑変性と似た症状が現れます。強度の近視に悩んでいる人も、アムスラー検査をしてみてください」(同)

 自然治癒の可能性は低く、早期の治療がその後の人生にかかわるというのは、どの疾患も同じ。少しでも不安がある人は、一度医療機関に相談してみよう。そして、医療機関では「注射治療」と「レーザー治療」のどちらかを受けることになるという。

「主流なのは注射治療です。目の中に薬を注入して、黄斑の変形や出血の原因になる新生血管を抑え込みます。ただし、悪化を防いで失明させないための治療なので、“発症前の状態に戻る”というものではありません。また、注射治療は1本10万円前後と非常に高額で、治療は複数回に及びます。保険診療で3割負担になるとはいえ、なかなかの出費になりますね」(同)

 注射は患者本人の生活の負担を抑えつつ、治療効果が得られるタイミングで受けるのが理想なので、医師としっかり話し合う必要がある。なかには、相性の良い医師と出会うまで眼科を転々とするケースもあるようだ。

「もうひとつのレーザー治療は、網膜にできた新生血管をレーザーで焼く方法です。ただ、レーザー治療は注射とは違うリスクがあり、入院治療になるなど制約が多いのが特徴ですね」(同)

ほうれん草の摂取が目に良い理由

 平松氏は、黄斑変性の治療中はもちろん、発症を未然に防ぐためにも「生活の見直しは必須」とアドバイスを送る。

「まず、喫煙者の『禁煙』は最優先事項です。そのほか、高カロリー、高塩分、高脂肪分の食生活もNG。食事は緑黄色野菜を多く取り入れてください。特に、『ルテイン』という成分は光のダメージを消去する重要な栄養素です。ルテインは黄斑そのものにも含まれていますが、その量は年齢とともに減っていくので、食事で補うようにしましょう」(同)

 ルテインは緑黄色野菜のなかでもほうれん草に多く含まれているので、1日に半束(100g)程度のほうれん草をおひたしにして食べるのがおすすめだ。食生活の改善のほかにも、適度なウォーキングや十分な睡眠など、血行に良いとされる習慣が黄斑変性の予防につながるという。

黄斑変性は、すぐに正しい対処をしなければ視力を大幅に下げて0.1以下になることも珍しくない難病です。たとえ治療をしても、暴飲暴食を続ければ失明寸前に逆戻りしてしまうこともあります。一方で、きちんと病気を理解して生活を改善すれば、9割の人は今と同じか、それ以上に見やすくすることもできるのです」(同)

 最後に、平松氏は「治療と生活は両輪です」と話してくれた。今の楽しさを優先してタバコを吸いながら不摂生を続けるか、将来を見据えて生活を改善するか……自らに問いかけてみてほしい。

(文=真島加代/清談社)

●平松類(ひらまつ・るい)
眼科専門医、医学博士。二本松眼科病院にて臨床の現場に立ちながら、テレビや雑誌など、メディアを通して「患者さんに病気の知識をわかりやすく伝える」ことを心がけ啓蒙活動を続ける。『黄斑変性・浮腫で失明しないために』(時事通信社)、『1日3分見るだけでぐんぐん目がよくなる! ガボール・アイ』(SB新書)など著書多数。

二本松眼科病院

清談社

清談社

せいだんしゃ/紙媒体、WEBメディアの企画、編集、原稿執筆などを手がける編集プロダクション。特徴はオフィスに猫が4匹いること。
株式会社清談社

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