ビジネスパーソン向け人気連載|ビジネスジャーナル/Business Journal
剣と魔法とミリタリーとSFテクノロジーと格闘技……その他もろもろ入り乱れるバトルの面白さはシリーズ中でも屈指で、戦闘中に新たな技を習得、そのまま使用可能になる「ひらめき」システムを過去作から継承。さらに技同士が組み合わさって威力がアップする「連係」システムが初めて登場した作品でもあります。
今回のリマスター版では7人の主人公の物語はそのままに、“8人目の主人公になりそこねた男”ヒューズのシナリオが追加されています。しかもヒューズ編だけでシナリオ7本分も。
なぜヒューズ編だけ7本も? と思う方も多いと思われますが、ヒューズ編は他の7人のシナリオの裏側や後日譚を描いた内容なのです。いやはや、これは実に心憎い趣向です。ただでさえ遊び続けてしまいがちな作品なのに、こんなことをされてしまったら、ヒューズを含めた全キャラクター分、エンディングまでプレイするハメになります(笑)。
実際、追加要素のない移植やリマスター作品は、その面白さの真髄を満喫できた時点で満足し、遊ぶのをやめてしまうことも多いもの。それはそれで悪いことではないのですが、本作はその点を面白いアイディアで、強力にフォローしているわけです。
また、RPGのリメイクではキャラクターのステータスやアイテムを引き継いで2周目以降をプレイできることも一般的ですが、本作には主人公が7人もいるため、単にそれを踏襲していたとすれば作業感も強くなっていたはず。しかし、ヒューズ編では各主人公のボスの強化版と戦えるだけでなく、ラストに最強の敵が控えているので、迷うことなくデータを引き継げます。
かつての本編部分に関しては確かにリマスター、しかしヒューズ編に関しては新作……というのは言い過ぎかもしれませんが、今風に言えば「ダウンロードコンテンツで追加された新規シナリオ」といった感じでしょうか。
プレイ前は正直、「リマスターで税込み4800円はけっこう強気な価格設定だな……」と思ったものの、ここまで楽しく遊ばせてくれるなら納得、いや平伏するしかありません。
と、今回はそんな好対照なリメイク版『ファミコン探偵俱楽部』と『サガ フロンティア リマスター』についてお伝えしました。どんな名作や人気作であっても、リメイク版やリマスター版が面白くなるとは限らないものです。ゲームの仕組みはどんどん進化しているものなので、当時のままでは古臭く感じられることも多いし、下手に手を入れた場合は別物になってしまいがちです。
『ファミコン探偵俱楽部』と『サガ フロンティア リマスター』がオリジナルに近い形でも楽しめた理由は、コマンド式アドベンチャーや、コマンド戦闘RPGというジャンルの絶頂期に現れた、他に類を見ない、そして挑戦的な作品だったからでしょう。
またそんな作品だからこそ、多くの人の心に残り、その結果として愛を持ってリメイクやリマスターに携わるスタッフたちにも恵まれたのかもしれません。
(文=高橋祐介/ライター、古ゲー伝承者)
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