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“国家事業”リニア新幹線、問われ始めた存在意義…追加費用1兆円超、JR東海の経営圧迫

文=編集部
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リニア工事による大井川水量問題が静岡県知事選の最大の争点

 JR東海リニア中央新幹線の東京・品川-名古屋間の総工費が想定より1.5兆円増え7兆円になると発表したことについて、静岡県の川勝平太知事は4月28日の記者会見で、「計画した5.5兆円の3割弱も余計にお金がかかるのは重大なことだ」と述べた。その上で「既存の新幹線(の収入)で賄うモデルになっているが、一回立ち止まって考える時に来ている」とした。「余計な経費もかかる。これで本当に開業までの資金を賄えるのかどうか」とも指摘した。

 60万人が利用する大井川の水量が減る恐れがあるとして、川勝知事が県内の工事許可を出していない。20年6月、JR東海の金子社長と川勝知事のトップ会談が行われたが、決着がつかず、27年開業の延期が事実上決まった。37年の大阪延伸もアウトである。

 任期満了に伴う静岡県知事選(6月3日告示、20日投開票)は、4選を目指す現職の川勝氏と自民党県連が全面支援する党所属の参議院議員で国土交通副大臣の岩井茂樹氏(静岡選挙区)の一騎打ちとなる。川勝陣営には立憲民主、国民民主の両党県連と連合静岡が支援態勢を構築。与野党が全面対決する構図だ。

 大井川の流量減少問題が知事選の最大の争点になる。川勝氏が再選すれば工事許可を出すことはないだろう。岩井氏が当選しても、おいそれとはOKは出せないだろう。大井川流域の市と町は、「住民の理解なしに工事に着手しないよう」要望している。これに対してJR東海は「住民の理解と協力が前提」と回答しているからだ。

「ルートを変更するしかないのではないのか。JR東海はルートを変更するとスピードが落ち、時間が余計かかると反対しているが、それはJRの都合。流域市町の住民にとっては死活問題だ」(地元の経済記者)

 20年6月の株主総会でリニア中央新幹線の強力な推進役であった葛西敬之名誉会長が取締役を外れた。葛西氏の在任中の“最大の功績”は、リニア中央新幹線を国家事業に格上げしたことだ。安倍晋三首相(当時)との太いパイプが物をいった。葛西名誉会長と安倍首相の共同プロジェクトと陰口を叩かれたリニア中央新幹線は、大きな転機を迎えることになった。

「早く着くことはいいことだ」という価値観が根底から見直されるかもしれない。リニアの優先順位はかなり下がるかもしれない。「令和の『戦艦大和』になる」(霞が関の高級官僚)といった冷めた見立てまである。

 リニア車両が発する強力な電磁波の影響について指摘もなされているが、自然環境を破壊してまでやらなければならない国家的な事業なのかという議論は尽きない。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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